由美子さんに会いたいです
「由美子さんに会いたいです」
学校が夏休みに入って早々のこと。広島県福山市の盈進(えいしん)中学高等学校の先生から手紙が届いた。中・高一貫の男女共学の進学校で創立110年を超える。特筆すべは、何と「読書科」なる科目の授業があるというのだ。1週間に1時間「読書」の時間があり、1年間に10冊は自分にとって大切な本を見つけることが教育目標だという。さらに、最近、クラブ活動として「読書部」が誕生し、部員たちがなんと!わたしのお店を舞台にした「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」を取り上げてくれたというのだ。
封筒の中には、高校2年と1年の部員6名の自筆の手紙が同封されていた。顧問の先生いわく、読後に「小林由美子さんに手紙を書こう」という話になったのだという。殴り書きではなく、一文字一文字丁寧に書かれた直筆の手紙に心が震えた。
同封の「読書科」についての説明冊子の表紙に「読むことは『知る』こと、書くことは『考える』こと」と書かれていた。まさに、その通りだと涙があふれてきた。近頃の若者はスマホばかりで本を読まないと言われている。え?そんなことを誰が決めたというのだ。ここに、多感な「本が大好きな子どもたち」がいるではないか!彼らの言葉の一つひとつに触れて感動し、幸せな気持ちになった。
どの手紙にも最後に、「由美子さんに会いたいです」と書いてある。嬉しくてたまらない。すぐに、「わたしがみんなに会いに行きます!」と返事を書いて投函した。著者の川上徹也さんに、この話を伝えると、「僕も行く!」「じゃあ一緒に行こう!」ということになった。翌朝、学校に電話して先生に「二人で行きます」と伝えた。
先生の了解を得て、Facebookにこのことを書いた。すると、懇意にしている出版社の編集長からメッセージが届いた。「小林さん、その盈進高校が広島県大会で優勝して48年ぶりの出場を決めましたよ‼️」。先生にもう一度電話をして、「おめでとうございます!」と、お祝いの気持ちを伝えた。
この原稿を書いている今日は8月5日だ。開会式を明日に控え組合せも決まった。二日目7日の第三試合だ。これがみなさんに読まれるときには結果が出ている。ぜひ、勝ち進んでほしいと願う。でも、人生は勝つ時よりも負けることの方が多い。後悔のない人生などない。
野球部、読書部のみんなに、いやすべての若者に声をかけたい。
「たとえ悔いることがあっても、負けることのない人生を歩いていってほしい」と。