本が助けてくれるよ、大丈夫!

「本が助けてくれるよ、大丈夫!」

広島県福山市の盈進学園中学高等学校には、「読書科」なる科目の授業がある。週1「読書」の時間があり、1年間に10冊は自分にとって大切な本を見つけることが教育目標だという。この高校の「読書部」の部員さん6名から手紙をいただいた。わたしのお店を舞台にした「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」を取り上げてくれたというのだ。どの手紙にも最後に、「由美子さんに会いたいです」と書いてあった。嬉しくてたまらず、著者の川上徹也さんに話すと、「僕も行く!」と言って下さった。
当日、取次会社の広島支店の中川支店長が、福山駅から車で送迎してくれた。実は、その本に登場する「中川係長」その人だ。読書部顧問の先生と司書の先生、理事長、校長にお会いして授業の終わる4時半まで校内を案内していただく。理事長室、校長室のまわりの壁板には15㎝×10㎝ほどの用紙が所狭しと貼られている。読書の感想だ。
82歳の理事長さんから伺った話では、この春、生徒たちに望まれて新設したクラブの一つが読書部だという。また同時に誕生した応援団部は、今夏、48年ぶりに甲子園出場を決めた野球部の応援にほとんどの生徒を引き連れて甲子園に行った。1回戦で敗れたものの7点も得点し、「あきらめない盈進!」と連呼したという。
驚くことに職員室いうものがなかった。廊下の突き当たりのオープンスペースに先生方がいて、その姿はいつも生徒たちから見える。椅子と机がなん組も置かれてて、生徒は相談があるとここで自由に面談できるのだ。特筆すべきは、中高一貫の特徴を生かして、クラブ活動を中・高6学年一緒に行っていることだ。中学1年といえばまだ子ども。高校3年はもうおとなである。上級生が低学年の面倒をみることで、問題を解決してゆく。学年が上がってゆくと後輩が次々増えて、ひとつのクラブに属している限り6年間で11学年の先輩後輩と関わることになる。それはきっと、社会にでて様々な年代の人たちと生きてゆくとききっと役にたつだろう。
何よりも「読書科」でしっかり読書力を身につけた彼らは、人生につまづいた時、挫折しそうになった時、本を読むことできっと自分を助ける言葉に出会い、生きる力をみつけるに違いないのだ。「尼崎の本屋のおばちゃん」も、泣きそうになりながらも、こう言っていたではないか。「本が助けてくれるよ、大丈夫!」と。