そこにいてくれるだけでいい
「そこにいてくれるだけでいい」
新しい年が明けました。いい話の図書館主のみなさまにとりまして、希望に満ちた幸せな年でありますように心からお祈り申し上げます。
昨年はコロナ禍の中、私にとっては「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」の本と、ドキュメント映画「まちの本屋」のおかげで、思いもかけない1年となった。年末ぎりぎりまで毎日のように「本を読みました!」「映画観ましたよ!!」と、全国各地から訪ねて下さる方がいた。全国14会場で上映の際には舞台挨拶と共に監督とのトークをさせてもらった。70歳を過ぎた身にはありあまる光栄だ。
大晦日31日、主人がシャッターを拭いてくれて店を閉めた。そして、「ご苦労さま、ありがとう」と言い合った。主人がしみじみと言う。「本当にいい1年だったね」。その一言に涙が出た。主人は、2019年4月1日に脳梗塞を患い不自由な身体になった。にもかかかわらず、「辛い」と零すこともなく上映会場出掛けるわたしを快く送り
出してくれた心の大きさにただ感謝しかない。
年が明けて、氏神様の生島神社に初詣に出掛けることにした。主人は「僕が行くと足手まといになるから一人で行って来て」と言う。そんなわけにはいかない。どうしても主人と一緒にお礼に行きたかった。しかし、車イスを押し歩くと2、30分かかってしまう。腰痛持ちのわたしは自信なく、タクシーで行くことにした。普段でもなかなか空車の通らない道路、お正月で走る台数自体少ないにもかかわらず何と、往きも帰りも道に出てすぐに拾うことができた。それはまさに奇跡だった。
近所の友達が、「いい年で本当によかったね、でもそれは今までの積み重ねがあったからよ、近くにあなたがいてよかった」と、言ってくれた。何て優しい言葉だろう・・・その時わたしは、何を生きる目的にしていたのか、わかった気がした。「そこにいてくれるだけでいい」。店の大小ではなく、何を成したかでもない。「あなたがいてくれてよかった」。そう思ってもらえることが、こんなにありがたいのだ。わたしも回りの人にそう言える人間でありたい、と思った年の始めである。