第32回「クリスマスゴミ拾い」
熱血先生 今日も走る!!!
「子は宝です」 第32回
「クリスマスゴミ拾い」
中 野 敏 治
生徒会担当の先生が、「クリスマスゴミ拾い」という活動をどこからか聞いてきました。実はこの活動は兵庫県の小学校に勤務している西村徹先生が全国に広げている活動です。
「第一回目のクリスマスごみ拾いを行う日は、今後も継続することを考えて実施日を12月25日のクリスマスの日に決めて、毎年行っていきたい」と生徒会の先生が職員会議で提案しました。冬休み中でもあるので、学校行事ではなくすべて希望制のボランティアでの実施です。生徒たちに参加の希望を聞くと、みんなワクワクして参加したいとのことでした。
いよいよクリスマスゴミ拾い当日です。集合場所となった駅前に、生徒会の先生とボランティアで参加した先生方が到着しました。駅前の大時計を見ると集合時間まであと20分ありました。
遠くからサンタクロースの帽子をかぶった数名の男子生徒が歩いてやってきました。ジャージ姿の女子生徒は右手に鞄を持ちながら、集合場所ではなく、駅前の観光協会に入っていきました。しばらくして観光協会から出てきた数名の女子生徒は上下ともサンタクロースの衣装に着替えていました。男子生徒にも上下ともサンタクロースの衣装で集合場所にきた生徒がいました。駅前にサンタクロース姿の中学生が70人以上集まりました。
生徒会の生徒が開会式を行いました。そのあいさつに驚きました。「今日は私たちがサンタクロースになって、いつもお世話になっている街の方にきれいにした街をプレゼントしましょう」とあいさつしたのです。そして次の生徒が「私たちの誰もができること、笑顔とあいさつ。街の方々に笑顔とあいさつもプレゼントしましょう」と話したのです。
サンタクロースの衣装をきて大騒ぎで街中を歩くだけにならないかと心配していましたが、生徒の素晴らしい挨拶に場の雰囲気が変わりました。
いよいよ中学生サンタクロースが街中のゴミを拾いながら歩きだしました。生徒は元気いっぱいです。保育園の前では、たくさんのサンタクロースが来たと、園児たちは窓から手を振って大喜びです。生徒たちは人気者です。「メリークリスマス」と園児にあいさつをしながらゴミを拾っていました。
大きな声であいさつをしながら街中を歩いている中学生サンタが、地域の方から声をかけられました。「頑張っているね。ちょっと待って」と。その方は家に入りハサミを持ってきました。そして庭に咲いている水仙の花をそのハサミで何本も切り始めました。水仙を花束にして、中学生サンタに渡したのです。中学生サンタは戸惑いました。今日は街の方々にプレゼントをしたくてゴミを拾っているのに、反対にプレゼントをもらってしまったと。
商店街の方も、駅員さんも、観光客の方も、タクシーの運転手も、中学生サンタに声をかけていました。教育行政の方々もクリスマスごみ拾いに参加しました。中学生サンタは街中で人気者になりました。
中学生の行動は、街を綺麗にする行動だけでなく、街の人々の心も動かし始めたのです。中学生サンタの行動は、どんな言葉で伝えるよりも多くの方の心に伝わりました。
ゴミ拾いが終えて集合した時の中学生サンタの顔は、すがすがしく、笑顔がいっぱいのサンタクロースになっていました