「モスバーガー創業者・櫻田 慧さんの言葉」に学ぶ
「モスバーガー創業者・櫻田 慧さんの言葉」に学ぶ
志賀内泰弘
田村茂さんとは15年来のお付き合いです。
当時、モスバーガーを展開する(株)モスフードサービスの専務をしておられました。
志賀内は、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動を立ち上げ、まだすぐの頃です。
「モスさんの接客にまつわるいい話を教えて下さい」
と頼んで、たくさんのエピソードを書かせていただき、拙著の中に何本も収まっています。
その田村さんは、現在office igatta代表としてコンサルタントとして活躍。初めての著書が発売になりました。
「外食マネージャーのための
ぶれないプライドの創り方」(同友館)
です。
その冒頭から、カウンターパンチのような、メチャクチャためになるエピソードが登場します。
ここに要約して紹介させていただきます。
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〇トマトの仕込み作業で学んだこと
銀行を辞めて、モスに正社員として入社後、業務に慣れてきた頃の夏本番の8月のことでした。
午前10時半頃、私は定番商品のモスバーガーやモスチーズバーガーに使われるスライストマトの仕込み作業をしていました。
当日の朝、仕入先から届いた新鮮なトマトをよく洗い、ペティナイフを使って、厚さ約1センチほどにスライスするのです。1個のトマトから5枚ほど取れました。
黙々と作業していると、突然創業者の櫻田さんがお店に顔を出されました。そしていきなり、
「お疲れ様! 田村さん、そのトマト、どこの産地だい?」
と尋ねられました。
「???」
「1個の仕入値はいくらかな?」
「???」
「スライス1枚当たりの原価はいくらかな?」
「???」
「この時期のトマトはどんな味なのかな?」
立て続けに質問を浴びせられるも、一つも答えられません。
すると、
「田村さん! あなたの足元にトマトのダンボール箱があるよね。見てごらん。産地が書いてある」
「茨城産です」
「カウンターの角に納品書が置いてあるね。単価が書いてあるはず。見てみて!」
(納品書を見て)「50円です」
「1個からスライスが5枚取れるから、1枚当たり…」
「10円です」
「田村さん(諭すように)、いいですか! 田村さんを銀行から呼び寄せたのはアルバイトさんと同じ仕事(作業)をして欲しいからではないんですよ。将来この会社を背負ってもらいたいと願ってのことです。いずれ田村さんには加盟店さんを指導していただく人になってもらおうと思っています」
櫻田さんはこう続けました。
「ところが、今のような仕事ぶりでは、トマトの切り方ぐらいしか指導できない。品質を最も重視するわが社のこだわり戦略が加盟店さんに伝わらないばかりか、お客様に喜んでもらえない。そうじゃないかい?・・・田村さん!これってマンネリというんだ。仕事に慣れてきて、心に余裕ができた頃に起こる病。・・・
仮にトマトの仕込みに30分かかるなら、その時間ただ単にスライスだけに手を動かすのか、その作業をしながら産地のこと、原価のこと、品質のこと…、いろいろと情報を得ながら作業するのか。与えられた時間は平等。その時間価値をどう生かすはそれぞれだが、でも考え方が大事。それによって成長に大きな差がでる」
さらに、こんな言葉も。
「常に準備している人には敵わない。それが将来の指導力・信用力になるのです。仕事の『奥』を楽しみなさい! 今日はトマトでもいい、明日はレタスでもいい。テーマをもってその材料が持つ沢山の情報から学びなさい。きっと将来役に立つから。田村さんがそうして成長すればおのずと会社も成長します」
私はその時何を考えて仕事をしていたのか。まさにマンネリに陥り、慣れた作業を黙々とこなしていただけの低レベルの職人になっていました。
マンネリは自ら学習の機会を失い、成長にブレーキをかけるものです。
どうせ仕事をするなら、その仕事の「奥」を楽しみつつ、成長の糧としよう!
成長のためのテキストは周りにいっぱいあります。それに気づくか気づかないか、生かすか生かさないか…。
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いかかがしたか?
「働くとはどういうことか?」という明快な答えが、ここにあります。