キャッチボールとお酒 (2006/8/19)
よく耳にする父親の夢。男の子なら一緒にキャッチボールをする。成人したら酒を酌み交わす。女の子なら美しい花嫁姿を見ること。
江南市にお住まいの安藤一恵さん(41)から、結婚当時のエピソードが届いた。安藤さんは短大を卒業して地元の会社に就職。そこで今のご主人と出会った。半年後に「結婚したい」と父親に切り出したが、かたくなに反対された。理由は明らかだった。彼が二十三歳も年上だったのだ。
昔から口数の少ない父親が、より寡黙になってしまった。駆け落ち同然に家を飛び出した。半年が過ぎたころ、母親の「そろそろ許してあげましょう」という言葉で二人のことを認めてくれるようになった。そして正式に結婚式を挙げた。
最近、高校野球を見ていて、こんなことを思い出したという。短大一年生の夏、父親が突然「今から甲子園に高校野球を見に行こう」と言い出した。愛知県の代表校の試合がある日だった。特に野球に興味があるわけではなかったが「いいよ」と言うと「そうか行くか」と喜んでくれた。女の子だからと日焼けを気遣って、つば広の麦わら帽子を買ってくれた。
安藤さんは妹と二人姉妹。お父さんに「男の子だったら」と言われたことがあるという。野球を一緒に見に行ったのは、キャッチボールの代わりだったのだろう。
さて今では、お父さんとご主人は仲の良い“飲み友達”だという。一人で実家を訪ねると「なんだ、今日は一人か」と言われるそうだ。お父さんのもう一つの夢もかなったのかもしれない。