スーパーのレジで (2006/12/2)
スーパーのレジで「しまった」と心の中でつぶやいてしまうことがある。
前に並んでいる人のかごに、買い物の商品が山盛りになっていることに気付いたときだ。他のレジに並び直そうとしてきょろきょろ見回すが、どこも長い列。急いでいるときは、いらいらして順番を待つことになる。名古屋市千種区にお住まいの森久美子さん(54)から、そんなスーパーでの出来事についての話が届いた。
森さんもレジに並んで順番を待っていた。ふと振り返ると、二十歳くらいの青年がお米を一袋手にして立っていた。茶髪にひざの破れたジーンズを履いていた。こちらはたくさんの買い物があったので、声を掛けた。「それ一つだけですか」と。それに「はい」と答えがあったので、順番を代わってあげた。
青年はレジで勘定を済ませた後、森さんの方を向いて「どうも」と言ってぺこりと会釈をした。自分の番になって勘定を支払うとき、レジの店員さんが話し掛けてきた。「代わってあげたお客さまも偉いけど、すっとお礼が言えるなんていい子だねえ」。さらに「私たちもお客さまに『ありがとう』って言われると、とてもうれしいんです」と。
ほんのささいなことだけど、森さんは気持ちの良い一日を送ることができたという。読者の皆さんも、きっと「私も」と同じ経験をした方が多いことだろう。
今どき、一言もしゃべらずに買い物を済ませることも可能な時代である。忙しい年末を控えて、こういう心の余裕を持ちたい。