パピーウォーカー知ってますか (2008/9/14)

 豊田市の野々山雅博さん(39)が高校三年の時、一匹の犬が家にやって来た。ラブラドルレトリバーの赤ちゃんだ。名前はリック。パピーウォーカーとして育てることになった。

 パピーウォーカーとは、生後間もない子犬を盲導犬として訓練に入るまでの約一年間、家庭で預かる仕組みのことだ。子犬は人の優しさを知り、家庭内でのルールを学ぶ。散歩に出掛け、車の音や人込みに慣れることができる。いかに愛情を持って育てられるかによって、将来、盲導犬になれるかが左右される。犬が人間を信頼してくれることが必要だからだ。

 ある日のこと、ちょっと目を離したすきにリックが道に飛び出した。そこへ車が。命に別条はなかったが、骨折してしまった。交通事故を経験した犬は車を怖がるため、盲導犬になるのは難しいと言われている。それ以後は一層愛情を注ぎ、家族同様に育てた。

 やがて盲導犬協会に引き渡す日が来た。飼い主のにおいや声を覚えているので、引退するまでは会えない決まりになっている。後ろ髪を引かれる思いだった。盲導犬になれる確率は十分の六。ましてや事故のこともある。家族からは「どうせ難しいなら、このまま飼い続けようか」という意見も。

 しかし、リックは厳しい訓練を乗り越えて盲導犬になった。そして、七年間活躍の後、この世を去った。野々山さんは言う。「あきらめないという心を教えられました。リックありがとう」。盲導犬の数が不足しているという。パピーウォーカーについての照会は、中部盲導犬協会=電052(661)3111=へ。