百歳の誕生日を前にして (2010/10/3)

 特別養護施設に入居していた小牧市の三和稔さん(74)のお母さんは、去る九月二十日の「敬老の日」が、なんと百歳の誕生日。施設では誕生会を準備していた。ところが、六日に容体が急変し、亡くなられてしまった

 三和さんは七人兄弟の長男。以前は自宅で母親の介護をしていたが、高齢になり世話ができなくなってしまった。老老介護だ。やむをえず施設を利用したが、実に献身的に面倒をみてくれたという。担当のスタッフ七人が交代で勤務するが、時間がオーバーしても付き添ってくれた。たんが詰まると、ショウガの湿布をのどに張ったり、蒸しタオルで体を温めたりと、まるで自分の親の世話をするかのように。

 こんなことも。長くベッドで寝たきりの状態が続いた。一歩も外へ出られない。それをおもんぱかり、野で花を摘んで部屋に飾ってくれた職員もいた。ときには自費で花を買ってきてくれることもあったという。

 通夜の席では、職員が一緒に涙を流してくれた。葬儀を終えて施設にあいさつに出向くと「三和さんをしのぶ会」を催したいと申し出があった。本当に家族同様に接していてくれたことにあらためて感激した。

 その九月二十一日の会は、百歳の旅立ちにふさわしく、介護職員、看護師、そして入居者やその家族のみなさんが集まり、お茶菓子をつまみながら談笑した。職員の一人からは「郷里の父親を昨年亡くしたが、離れていて何もしてやれなかった。その分を尽くさせていただきました」と言われた。三和さんは「感謝の気持ちでいっぱいです」とおっしゃった。