少年の優しい一言(2006/6/10)

 「ほろほろ通信」で「カッコイイ人」のことを続けて紹介したところ「こんな話もあります」と、何通かのお便りをいただいた。今回はその中から、名古屋市名東区にお住まいの岩村圭子さん(68)のお話を紹介したい。

 岩村さんは地下鉄の最寄り駅から徒歩で十二、三分の所に住んでおられる。行きはいいが、帰り道が大変。なぜなら、自宅までずっと上り坂が続くからだ。歳を重ねるごとにだんだんつらくなってきた。その日も、駅前で買い物をして両手にいっぱいの紙袋を持って、上り坂へ向かった。紙袋の中身は食料品なので、地面に置くのもためらわれ、何度も休み休み歩いていった。

 そんな岩村さんを、小学校四年生ぐらいの自転車に乗った少年が追い越して行った。坂道の途中に交差点があり、信号待ちをしていた少年に追いついた。二人が並んだとき、突然、少年が声をかけてきた。

 「おばさんは、真っすぐ行くんですか」

 岩村さんが「ええ、そうよ」と答えると、少年が「荷物の一つを僕の自転車のかごに入れませんか」と言う。坂の途中から、フーフーいいながら上ってくる岩村さんを見ていたのだろう。

 見たところ子ども用の自転車なので、とても自分の大きな荷物は入りそうもない。でも、その気持ちがうれしくて「ご親切にありがとう。もうすぐだから大丈夫よ」とお礼を言った。

 よほどつらそうに見えたのだろうなぁ、と思いつつ残りの道のりを頑張って上った。ようやく帰宅。いつもなら、疲れてソファでしばらく休憩してからでないと買い物の片付けができないが、この日はなんだか体が軽かった。あの少年の優しい一言のおかげに違いないと思った。