メルマガ「志賀内泰弘の恩送り通信」第36回(その15)志賀内人脈塾「一つの出逢いが人生を変える」~「ギブアンドギブ」を腹の底に落とすためのエピソード(4)「ぐるりの教え」

メルマガ「志賀内泰弘の恩送り通信」第36回
(その15)志賀内人脈塾「一つの出逢いが人生を変える」
~「ギブアンドギブ」を腹の底に落とすためのエピソード(4)
     「ぐるりの教え」

 ☆今の私があるのは、友人・知人・両親・親戚・先輩・同僚・心の師など大勢の人たちの「おかげ」です。いただいたたくさんの「御恩」を次の人へと
「送る」ために、新作や約3.000本のアーカイブスから厳選してお届けします。
名付けて「志賀内泰弘の恩送り通信」です。
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拙著に、自己啓発小説「「いいこと」を引き寄せるギブアンドギブの法則」(PHP研究所)があります。
小説の舞台は愛知県知多半島に浮かぶ小さな島“多賀良島"。
その島に異国のみすぼらしい托鉢僧・タルシルが降り立ったことから物語は始まります。
ひょんなことから、本書の主人公である「多賀良島しあわせホテル」の若女将・風見美咲 がタルシルに弟子入りし、「ギブ&ギブ」という、その一見“奇妙"な教えを実践していきます。
今回は、島の漁師たちが、「ぐるりの教え」という、島に伝わる逸話を語ります。
志賀内が、このメルマガでも紹介した「客家の教え」が元になっています。

小説の本文から、一部をピックアップして紹介させていただきます。
セリフが多いのですが、エッセンスを読み取っていただけたら幸いです。

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「権作よ~、あの話じゃろ?ほら、『ぐるりの教え』」
 「ほい、そうじゃ『ぐるりの教え』じゃよ」
その場の70歳を超えた人たちの多くは、「うむうむ」「ああ」などと頷いた。

 美咲と龍太が、顔を見合わせて、同時に訊いた。
 「『ぐるりの教え』って何?」
 権作は、ぽつりぽつりと語り始めた。

 「この島の言い伝えじゃ。わしが子どもの頃に、爺様から聞かされた話でな。
昔、昔の、ある冬の寒い晩のことじゃそうな。
一人の男が、多賀良島にふらりと流れて来た。
そして、「蘇民将来(そみんしょうらい)」と「巨旦将来(こたんしょうらい)」という二人の兄弟の家の前までたどり着いたという。
まず、大きな家の裕福そうな「巨旦将来」の家の門を叩いた。
「お腹が空いているので、食事を恵んでくれないか」とな。
じゃが、断られてしまった。
次に、「蘇民将来」の家の門を叩いた。
すると、「それはそれは大変ですね。
うちには粗末な食事しかないけれど、一晩泊まっていってくださいな」と喜んで迎え入れてくれたそうじゃ。

さて、翌朝のことじゃ。
家を出て行く前に、「この『蘇民将来子孫』と書かれたお札を家の前に貼っておきなさい。
疫病にかからなくなりますよ」とその男に言われた。
不思議なことを言うものだと思ったが、それを信じてお札を貼ったそうな。
ところが、そのすぐ後、この島に疫病が流行ってな。
「巨旦将来」を初めとして、多くの島人が病に罹って亡くなってしもうた。
じゃが、蘇民将来の家だけは、疫病を免れたと言う話じゃ」

伊原社長が話を受けるようにして言った。
「それは、全国各地で知られている蘇民将来の逸話ですね。
京都の祇園祭では、その「蘇民将来子孫也」の護符を身に付けてお祀りに奉仕すると聞いています。
その旅人こそは、スサノオノミコトだったというのです。」

松重の爺さんが懐かしげに言う。
「まあ子供の頃にはなあ、困っている人がいたら親切にしなよ、と悪さをした時に教訓みたいなことでよく聞かされたものだ」

権作が、さらに話を続ける。
「実はなあ、これには続きの話があってな。
その旅人が島を去る時、こんなことを告げたのじゃ。
右隣の人に親切にされたなら、左隣の人に親切にしなさい、とな。
この島はぐるりと海岸線に沿って家が立ち並んでおる。
今は、ずいぶん空家も多いがな。
だからな、この島の者なら、旅人の話を聴いただけで、何を言わんとしているか理解できたのじゃ」

ここで美咲が答えた。
「わかった!右隣の人に親切にされたなら、左隣の人に親切にする。
親切にされた人は、また左隣の人に親切をする。
次から次へ。結局ぐるっと回って自分に返ってくるというのね」

「そうじゃ、だから『ぐるりの教え』と呼ぶんじゃな」
「情けは人のためならず、ね!でも、そんな話、私は聞いたことがないわ」
「ああ、だから昔の話じゃ。わしも今、思い出した」
「わしも忘れておった・・・そう言えば、この島の唄も『ぐるりの教え』と関係があると聞いたことがあるぞ。二番の詩じゃ」
そう言うと、松重の爺さんは、ゆっくりと語るかのように小声で歌い出した。

多賀良島はよ~ たからの島よ~
珊瑚 黄金(こがね)に真珠の玉を~
海鳥さんが運んで来たと~ 
どこに隠した 祠か井戸か~
知らぬ存ぜぬ多賀良島~ ヨイッショ
多賀良島はよ~ たからの島よ~
回り回って幸(さち)が来る  
宝も回って 我に来る~ ヨイッショ

 美咲が急に大声を上げた。
「そういうことだったね!
私、この唄の意味も知らずに歌ってた。
次々と隣の人に親切を送ったら、ぐるっと回って自分に幸せが返ってくるよ、っていう意味だったのね」

 伊原社長が感心している。
「なんて素晴らしい島でしょう!
商人として、この唄の意味がよくわかります」

「どういうことですか」
と美咲が尋ねる。
伊原は「ここはタルシル禅師に」と説明を譲った。
タルシルは、まるで辻説法のように熱弁を振るい始めた。
その出で立ちは、ホームレスのままだったが、醸し出す雰囲気は凛として別人のように変わっていた。
「『親切』というからわかりにくいのでゴザル。
これを、物に例えれば理解しやすくなりマス。
例えば、右隣の家の人から、旅行に行ったお土産をもらったとします。
千円するお菓子だったとしましょう。
しばらくしてお土産をもらった人が旅行に出掛けて、お土産を買って来た。
やはり千円相当のものを左隣の人に差し上げる。
そういう『ぐるり』を繰り返すことで、島の周りの家々を一周して、自分に返ってくるというわけです。
何か月後か、何年か後に、再び右隣の家の人から旅のお土産をもらうことになる。
この話がすごいのは、『経済波及効果』で説明が付くと言うことです」
「え?!経済?」
「はい、経済でゴザル。
もし、右隣の人から千円のお菓子をもらって、右隣の人にまた千円のお菓子をお礼に返したら、千円たす千円で合計二千円になりマス。
それでおしまい。
つまり、ギブアンドテイクで完結してしまいマス。
ところがでゴザル!仮に、島のぐるりに100軒の家が立ち並んでいたとしましょう。
ある人が最初に買ってきた千円が、一周島を回る間に、合計で10万円にも膨れ上がるのです。
これがギブアンドギブの力でゴザル」

                        
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〇志賀内泰弘がおよそ30年間、取材、体験を元に書き続けて来た
「ちょっといい話」のアーカイブスです。
ここに集まる「いい話」の主人公に共通するキーワード。
それは、ギブアンドギブ! 「利他の心」です。
忙しい毎日をお送りの皆さんに、日々の生活からちょっぴり途中下車して、志賀内とその仲間(賢人・奇人・変人・達人) たちの「ハートフルな感動物語」をお楽しみいただき、心の癒しにお役に立てたら幸いです。

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