メルマガ「志賀内泰弘の恩送り通信」第39回「こんなスゴイ友達を紹介します!」~放課後等デイサービス「スローウォーク」所長・西村徹さん~

メルマガ「志賀内泰弘の恩送り通信」第39回
「こんなスゴイ友達を紹介します!」~放課後等デイサービス「スローウォーク」所長・西村徹さん~

 ☆今の私があるのは、友人・知人・両親・親戚・先輩・同僚・心の師など大勢の人たちの「おかげ」です。いただいたたくさんの「御恩」を次の人へと
「送る」ために、新作や約3.000本のアーカイブスから厳選してお届けします。
名付けて「志賀内泰弘の恩送り通信」です。
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西村徹さんは、兵庫県養父市生まれ。
「いのちの教育」を求め続けた教育者・東井義雄氏に薫陶を受け、生涯の大半を小学校教師として歩む中で特別支援教育を大切にしてこられました。
そして、現在は、子どもが自分らしく自信をもって生きていくことができるように指導を続けるため、児童発達支援・放課後等デイサービス「スローウォーク」を開設し、全国で講演活動をしておられます。

その西村徹さんのエッセイ「花咲か先生の学級日誌」をお読みいただけたら幸いです。今日は、その第2回です。

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「ADHDとちゃうの」
         西村徹 

妻に言われて初めて気づく
皆さんは、今の仕事をしてる理由を考えたことがありますか。
精神科の医者になった友人がいます。 でも、なぜ、内科でも外科でもなくて、精神科の医者を選んだのでしょうか。
その友人は、小学生の頃、不登校でした。
大人になってから医者になった彼と電話で話していると「今、学校に行くことが難しい子どもたちも診ているよ」と言いました。
精神科の医者になった理由のひとつに、子どもの頃、不登校であったことが関係あるのかもしれません。
私は、教員生活の後半、特別支援学級や通級指導教室を担当し、個性豊かな子どもたちのサポートに当たってきました。
そして、退職してからは、放課後等デイサービス「スローウォーク」を立ち上げ、個性ゆえに学習がしにくい子どもたちのサポートをしています。
なぜ、私は、このような道を選んだのか。 
その理由を考えるきっかけとなったのは居酒屋での妻の一言でした。
「お父さんは、ADHDとちゃうの」
※ちなみに「ADHD」とは「注意欠如多動症」のことです。ネガティブに言うと、落ち着きなく、多動で注意力に欠けているタイプの人間をいいます(汗)。
「だって、日曜日、お父さんはパソコンに向かっていたかと思うと料理をしている。
台所にいるかと思うと畑でタネを植えている。畑を見るとそこにはいなくて洗車している。
休みなく、ずっと動いているよね。『ADHDってお父さんのような人を言うんじゃないのかな』と思ったの」

衝動性が高く、落ち着きのない子どもだった
私は仕事柄ADHDについては知っていましたが、家内に「あなたはADHDよ」と言われたことは正直ショックでした。
その夜はショックから早めに床につき、朝方、布団を被りながら考えいると家内の言う通りかもしれないぞ!と思えてきたのです。
それは、自分の子どもの頃のことを思い出したからでした。
幼い頃から周りの大人や先生たちに「徹ちゃんは、じっとしてないなあ」とよく言われてきました。
ある時、公園で遊んでいると「滑り台の上からおしっこをするとどうなるだろう」と思いつきました。
きっと、滝のようにおしっこが美しく流れるに違いない!と思い、ためらいなく実行しました。
思ったほど美しくないなあと見ていると、近くの大人に「こらあ、そんなとこで、おしっこをしているのは誰だあ」とこっぴどく怒られました。
思いついたことをすぐに実行するので、叱られたことは数限りなくあります。
教室では、じっと椅子に座っていることができず、いつも体を動かしていました。
隙あらば、隣りや後ろの子と話をする、消しゴムのカスを丸める、ノートに落書きをする。 
先生の話を聞いておらず、いつも違うことを頭の中で考えている…。勉強が出来るわけがありません。
特に算数の分数計算など、辛抱強く順序立てて考えることが大の苦手でした。

その反面、こんなこともありました。
それは、小学生四年生の時のこと。
その頃、土曜日はお昼前に下校でした。
友だちと下校中に、いったん家に帰って弁当を持って山登りをしようという話がまとまりました。
山頂で弁当を広げると、友だちはお母さん手作りの色とりどりの弁当。
一方、私の弁当は真茶色。
私は、帰宅後、母を待てずにインスタント焼きそばを作り、弁当箱に詰めて持っていったのです。
それを見た上級生が「弁当に焼きそば!そんな手があったんだなあ、びっくり」と絶賛されたのです。
衝動性が高く、落ち着きのない子どもでしたが、アイデアはユニークでしたし、行動力もありました。

自分自身を自覚することで道が開けた
その後、思春期に入り、自分のコントロールが難しく、自分を持て余すようになりました。
なんとかコントロールできないかと本を読み、講演を聴きました。
すると、少しずつ「自分コントロール法」が見つかり始めたのです。
○ 目に入ったことすぐする前に、優先順位をつけて行動する。
○ 毎日、自分の行動をチェックする。
○ 怒ったり失敗したときにその理由を振り返り、その失敗を生かす。

 ある時、ネットで「ADHDタイプの改善方法」を調べてみました。
驚いたことに、私が見つけた方法と共通点が多かったのです。
「やっぱり俺はADHDだな」と妻の一言に確信を持ったのでした。
自分自身を自覚するにつれて、子どもたちの中にもADHD傾向の子がいます。
学習に集中できない、じっと座っていることが難しいなど、子どもの困っている様子が人ごとのようには思えなくなってきました。
そう思いながら教室を見回すと次のような子どもたちの姿が見えてきたのでした。
・教科書がスラスラと読めない。
・漢字が覚えられない。
・計算ができにくい。
なにより、私が切なく思ったのは、こういう子どもたちが持っている共通した思いです。
それは「自分がダメだから学習ができにくいんだ」という「自分を責める」思いです。
それから「なぜ、学習に集中しにくいのか」「なぜ、特定の学習ができにくいのか」という専門の勉強を始め、指導者としての資格を取ることもできました。
現在、「ADHDは、よい面もいっぱいある。音読や漢字が苦手なのは、今、取り組んでいる学習方法が合っていないからかもしれない。
自分の良さを見つめ、自分が学習しやすい方法を子どもたちと一緒に見つけたい」という思いを持ち、子どもたちのサポートに当たっています。
私は今、自分の子ども時代の忘れ物を、仕事をしながら探しているのかもしれません。

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