ハーレーサンタクラブ代表 冨田正美さん・「俺たちがやらなきゃ、誰がやる」(その1)

 

ハーレーサンタクラブ代表・冨田正美さん(トミー)のこと
https://harley-santa-club758.crayonsite.com/

〇冨田正美さんは、さまざまなボランティア活動をして来ました。
 その中でも、一番に力を注いでいるのが、「児童虐待防止」の活動です。
 2014年に、友人の紹介で知り合った頃、冨田さんはまだ愛知県庁の職員でした。
 その頃、お話を伺ってまとめてエッセイを紹介させていただきます。

「ハーレーサンタ」を知っていますか? 

 新聞やテレビを見ていて、思わず顔をしかめたくなるようなニュースがあります。児童虐待です。幼い子供が、実の母親や父親に虐待されて死んでしまう。珍しくなくなってしまうほどに増えてきました。なんでも毎週1人の子供が虐待で亡くなっているそうです。 
 誰もその子を救えなかったのだろうか。きっと、両親も虐待してしまう理由があるはず。相談できる相手がいなかったのだろうか。胸が切なくなります。

 そんな思いが募り、
「何か自分にできることはないか」
と立ち上がった友人がいます。愛知県教育委員会の冨田正美さんです。
 冨田さんは、何度も児童虐待防止のセミナーやシンポジウムに参加していました。ある日、ふと気づきました。周りの参加者の顔ぶれがいつも同じであることに。このままでは児童虐待は無くなるどころか増えるばかり。まず、もっと大勢の人たちに児童虐待のことを知ってもらう必要がある。

 そんな時のことでした。
 クリスマスにサンタクロースの格好をして東京都内でバイクを走らせ、児童虐待の啓蒙活動をしているボランティア団体のことを知ります。実は冨田さんの趣味はバイク。それもハーレーダビットソンに乗っていました。
 「これだ!」と身体に電気が走る思いがしました。バイクを集団で乗り回す人のことを世間では「暴走族」と言います。そのためか、何人かでツーリングをしても、怖がられたり先入観から嫌われたりすることもあります。高校生でバイクに乗っているというだけで不良扱いされる学校もあります。
 でも、心底バイクを愛している人たちがいる。そんなハーレーの愛好家に声を掛けて、「ハーレーサンタCLUB名古屋」という団体を立ち上げました。

 クリスマスになると世界中の子供たちが笑顔になります。でも、その裏側で身体や心に傷を作って、悲しい夜を過ごしている子供たちがいることを、まずは知ってもらいたい。
 児童虐待を防ぐには特効薬はありません。本当に切羽詰まった場合には、近くにいる人・・・ご近所や幼稚園・学校の保護者仲間が「最近、あの子の様子がおかしいわ」と気づいてあげ、児童相談所や福祉事務所に通報するしかないのです。実は、児童福祉法では虐待の事実を知った人は通告する『義務』があるのですが、このことはほとんど知られていません。

 冨田さんの呼びかけに大勢のライダーが集まりました。全員がサンタクロースの格好をしています(東急ハンズなどで調達)。でも、帽子だけはオレンジ色のものを作りました。   児童虐待防止活動のシンボルである「オレンジリボン」にあやかってです。
 初めての年である2009年12月23日(天皇誕生日)に、名古屋の東別院に50台のハーレーを中心としたサンタライダーが集まりました。「何事だ」と視線を寄せる人たちもいます。

 そんな中、一人の女の子が、冨田さんに呼ばれて前に出てきました。実際に児童虐待に遭った経験のあるFさんです。彼女はみんなの前でスピーチを始めました。

 「私の家は母子家庭です。母は私が小学生の時に薬物で刑務所に入りました。出所してからは障がい者手帳を持つほどで、重い精神病を治すため、現在も病院に通っています。家は母の物であふれていて私の部屋はなく、リビングの一畳もないスペースを使って生活していました。母に暴力を受けたり、「死ね」と日常的浴び続け、逃げる場所さえなかったのです。それが、私にとっては普通でした・・・」

 参加してくれたライダーの中には、いわゆる「ヤンキー」と呼ばれるような青年もいました。最初のうちは、お祭り騒ぎのような気分で参加した様子でしたが、彼女の話を聞いているうちに真剣な表情になっていきました。そして、出発する際には左腕にオレンジリボンのステッカーを貼り、バイクのミラーに小旗を立てるなど活動の趣旨を充分に理解してくれました。
 いざ!出発!!
 名古屋市内でハーレーのパレードが始まりました。奇異な目で「何事か」と注目を浴びました。信号待ちで、子供たちが手を振ってくれたり、市バスの中から応援してくれる家族もいました。冨田さんは言います。
 「実は、後で苦情も届きます。『何が児童虐待だ!ハーレーなんて何百万円もするバイクに乗っていい気なもんだよな~』などと。何もしなければ、こうした批判を受けることはありません。でも、何か動かなければ、児童虐待のことを知ってもらえません。行動することで、何かが動くと信じています」
 年々、参加したいというバイクの数が増え続け2012年には300台になってしまいました。そのため、その後は交通の妨げにならないようにと参加台数を150台に限定したそうです。また、2013年からは名古屋で参加したメンバーが福岡でも開催。東京、名古屋、福岡の年末の風物詩になりました。

『冨田正美さんからのメッセージ』
「他人のせいにするのではなく、自分たちができることをしよう」
「人の為に火を灯せば、自分の前も明るくなる」
「俺たちがやらなきゃ、誰がやる」
○あなたにできること
①虐待と思われる事実を知ったときには通報してください。
②子育て中の親子に、やさしいまなざしをお願いします。
③子育てに悩んでいる人は、ひとりで抱え込まずに相談してください。
④虐待と思われる事実を知った時には通報してください。
⑤虐待を受けた子どもたちの自立を支援する輪に協力してください。
⑥虐待を受けた子どもたちの親代わり(里親)になってください。

「虐待かな?」と思ったら
児童相談所全国共通ダイヤル 0570-064-000 189(いちはやく)
全国子育て・虐待防止ホットライン 0570-011-077