中村由美さん「日本一の秘書」の話①

中村由美さん「日本一の秘書」の話①

志賀内泰弘

中村由美さんと最初に出逢ったのは、もう18、9年も前のことになるでしょうか。
カレーハウスCoCo壱番屋の300店舗達成記念パーティの会場で、創業者の宗次德二さんとツーショットで記念写真を撮っていただいたのが中村さんでした。
ずっとカメラを手にして、宗次さんの後ろから陰のように付いていらっしゃったことが思い出されます。

その時、志賀内は係長にすらなっていない「しがないサラリーマン」でした。もちろん、一冊の本も出していないどころか、新聞・雑誌の連載も夢のまた夢と思っていた時代です。
中村さんが、宗次さんの秘書をしていることは、何度も本社へ電話をするうちにわかりました。でも、最初の出逢いから間もない1996年に、中村さんは日本秘書協会が選出する「ベストセレクタリー」を受賞します。
つまり、日本一の秘書!
そんなスゴイ人だとは知らず、その後もフレンドリーなお付き合いをさせていただいていました。
なにしろ、CoCo壱番屋では25年にわたって3人の社長の秘書として仕えて来られました。いゆゆる「黒子」です。黒子は表には出ません。だから、本当に控えめで謙虚なのです。
そんな中村さんに、スポットライトが当たったのは、1冊の本でした。
野地秩嘉著「日本一の秘書・サービスの達人たち」新潮新書。
ここに、中村由美さんが大きく取り上げられたのでした。
ひっそりと黒子に徹して働いていたのに、もうマスコミがほっておきません。誰もが、日本一の秘書から仕事の極意を学びたいと思います。
そして、今回、初めての著書「日本一秘書の気配り力」祥伝社黄金文庫が刊行されました。
志賀内も、そのページを丁寧に、そして食い入るように読ませていただきました。
その中から一つ、「あっ!」と思った接客を紹介しましょう。

秘書の仕事には、定型業務と呼ばれるものがあります。
電話や来客の応対、文書作成・管理などです。これらは、ともすれば、型通りのルーチンワークに終始しがちです。でも、ちょっとした気配りをワンポイント加えるだけで、相手の心に残る、一味違うおもてなしや対応へとグレードアップできるといいます。
たとえば、夏場の一番暑い時間帯にお客様がいらっしゃったとする。
夏なら、冷たい飲み物を用意するのが普通ですが、中には、
「どこへ行っても冷たいものばかりでお腹が辛くなることも・・・」
という人もいます。そこで、汗だくのお客様に対しても、一応聞いてみる。
「今日はほんとうに暑いですね。冷たいものをご用意しましょうか?」
そうすれば、相手は、
「温かいお茶を」
と要望することもできます。さらに、一緒に冷たいおしぼりを手渡すと、もっと喜んでいただける。

この夏は本当に暑かったですね。
あちこちの会社や家を訪ねましたが、9割は冷たいお茶かアイスコーヒーが出てきました。
志賀内は胃腸の調子を整えるため、真夏でもほとんど冷たいものは口にしません。そのことを知っていて、
「あっ、志賀内さんは温かいお茶がよかったですよね」
と気遣ってくれる人もいます。
それだけに、中村由美さんの説く、「気配りのワンポイントをプラス」が心に響きました。