理髪店が心のオアシス (2008/4/13)
一宮市の小野木朝代さん(49)の息子さんは養護学校高等部に通っている。重度の知的障害を伴う自閉症で言葉の理解力が乏しく、じっとしていられない。そのため散髪をするのが大仕事。首にタオルを巻くのを嫌う。髪が首筋や背中に付くと気になり、服まで脱いでしまう。
そんな息子さんを快く迎えてくれたのが近所の理髪店のおじさんだった。お茶やお菓子、着替えを手に夫婦で付き添って出掛ける。持ち込んだお気に入りのビデオを見ながら刈ってもらう。時には音楽に合わせて踊ってしまうこともある。小野木さんが「いすに座りなさい」と注意すると、おじさんは「そんなこと言わなくてもいいよ。好きにしていいよ」と言ってくださる。
さらに「ここを好きになってくれればいいよ。そうすれば少しずつでも切れるから」と。一時間半ほどの間で、本人がじっとしているわずかなすきにカットする。「またあしたおいで」と言われ、四、五回通うことになる。気の遠くなるような手間と時間。その忍耐力には頭が下がる。
お世話になって十年がたった。今ではおじさんは、息子さんの心の動きが手に取るように分かるようで、息子さんの気持ちの良き理解者でもある。家族にとっても世間話をしたりと、心のオアシスのようなくつろげる場所だという。