東山は逃げたりしない (2010/1/17)

 前回に続き、愛知県赤十字救急奉仕団でボランティア活動をしている看護師の仙田八千代さんの話。奉仕団では春と秋の行楽シーズンに、東山動物園内の二カ所に救護所を設けて傷病者の応急処置を行っている。遠方からの来園者も多い。その日を楽しみにしているので、少々体調が悪くても無理を押して参加されることがある。

 昨年九月下旬のこと。福井県から来た家族は、朝六時に車で出発した。小学一年の息子さんは眠っていたので、そのまま抱えて車に乗せた。ところが園に到着したころ、目を覚ましたのにぐったりとしていることに気づき、慌てて救護所に駆け込んで来られた。熱を測ると三八度四分。幸い症状からインフルエンザではない様子だが、せっかく楽しみにしていたのに…。

 でも体が一番大切。「東山は逃げたりしないから、また元気になったら遊びに来てちょうだいね」と話し掛ける。無理をして楽しくなるはずの東山が、つらいだけの思い出にならないようにと。その家族は、どこも見ず早々に帰って行った。残念そうな男の子の後ろ姿に「おだいじに」に声を掛けたという。

 仙田さんは「奉仕団の信条の一つに、すべての人々の幸せを願い陰の力となって人々に奉仕する、というものがあります。新型インフルエンザのこともあり来園者が安心して過ごせるように努めたい」とおっしゃる。奉仕団は看護師や医師でなくても、日本赤十字社が行う救命講習を修了すれば参加することができる。

(問)日本赤十字社愛知県支部ボランティア課=電052(971)1599