トイレ掃除から学んだこと (2010/8/22)

 天白区の安江泰樹さん(35)は、独立開業資金をためるため、いくつも掛け持ちで仕事をしていたことがある。そのうちの一つ、クラブでアルバイトをしていたときの話。最初に命じられたのがトイレの掃除。これがきちんとできるようになると、ボーイをさせてもらえる。

 ある日、睡眠不足や疲れもあり、トイレの中で「なんでこんな仕事をやらなきゃいけないんだ」と言い、ブラシを床にたたきつけてしまった。それをたまたま先輩に見つかり、首根っこをつかまれて正座させられた。しかられると思いびくびくしていると、こんな話を始めたという。

 「今、こんな仕事って言っただろう。世の中には、そのトイレ掃除を誇りややりがいを持ってやっている人がたくさんいるんだぞ。その人たちに失礼だろう。その仕事があるということは、誰かから必要とされているということなんだ」。そう言われてハッとした。さらに「どんな仕事の先にもお客さまがいることを忘れるな。直接お客さまから声をかけられなくても、お客さまの喜ぶ顔を思い浮かべながら仕事をするもんだよ」。

 安江さんは気が付くと泣きだしていた。以来、トイレの天井や便器の裏側など、人の目に触れない場所までもきれいにするようになったという。また、ほかの仕事に就いたときにも、お客さまの要望を先回りして読み取ろうと努めるようになった。それがひいては独立するのにも役立った。「どんな仕事でも、やらされるのではなく、どう取り組むかが肝心。それを教えてくれた先輩に今も感謝しています」と安江さんは言う。