地下鉄駅の不思議な詩 (2010/10/31)

 10月24日付「ほろほろ通信」で、名古屋市千種区の小林和子さんが地下鉄自由ケ丘駅の階段の壁に見つけた詩を紹介した。「今日はあなたの誕生日/あなたはわたしの手をにぎり/『産んでくれてありがとう』/と微笑(ほほえ)んだ…」

 小林さんは不思議に思った。このパネルのどこにも企業名が入っていない。展覧会でもない様子。小林さんに「調べて」と頼まれ名古屋市交通局へ照会した。すると、この駅の壁面は市内のある広告代理店が委託を受けて管理していることが判明。その会社へ尋ねると事情がわかった。

 不況で広告主がみつからない。赤字になる。かといって空きスペースのままでは寂しい。たまたま営業担当の本田達正さん(32)は、自作の写真と詩を組み合わせた作品を発表しているアーティストでもあった。そこで地下鉄利用者に喜んでもらおうと、自己負担で作品を大きく引き伸ばし空きスペースに張った。それが小林さんの心に留まったのだった。

 このことを報告すると、小林さんは詩に感動したお礼を言いに作者の本田さんを訪ねた。そして絵はがきになった作品をたくさん買い求めた。しばらくして、小林さんから筆者にそのうちの一枚が届いた。そこにはこんな詩が。「おかしいと気づいたことを何も言わずになかよくしているのが優しさではなく/すなおに言ってあげるのが優しさ/でも自分は弱いから眠いふりしてなかなか言うことができないんだなあ」

 続けて本田さんからも報告が届いた。「あなたと一緒にいたいのは/あなたの幸せが/わたしの幸せになったから」という詩のはがきで。