ボール供養で道に迷って (2011/3/20)

 昨年の12月4日。あま市の山本ゆかりさん(47)は、二十歳になる娘さんと二人で、名古屋市千種区の医王寺まで出掛けた。この日行われた「ボール供養」に参加するためだ。サッカーや野球などあらゆるボールに感謝をして供養するという珍しい祭事である。ところが地下鉄茶屋ケ坂駅で降りて住宅街で道に迷ってしまった。

 タクシー会社の看板が目についた。表で車を洗っていた人に尋ねた。タクシー会社ゆえに道には詳しいはず。タクシーに乗ってもいいかなと思って。

 すると、その人は「寒いから中に入ろう」と事務所に招いてくれた。何人かの人たちが集まってきた。一人が地図を広げて指を差して説明する。なかなかわかりにくい。「うちの運転手でも迷うことがあるよ」「歩けないこともないけど寒いから車に乗りなさい」と促されて乗ったのは、乗用車だった。「ハイヤーなのかな」と思ったが、降りる時に乗車賃のことを言うと「これはメーターのない車だからいらないよ」と言われ驚いた。

 実は「ボール供養」に出掛けたのには目的があった。娘さんはドラゴンズファン。毎年、ルーキーが祈願すると、翌年大活躍することで知られているのだ。時間に間に合ったことで、大ファンの岡田俊哉投手を見ることができた。

 帰り道、タクシー会社の皆さんにお礼に温かいコーヒーでも届けようと思ったが、コンビニも自販機も見つからず渡せなかった。「娘も私も思いも寄らぬ親切を受けて感動しました。ありがとうございます」と山本さん。それは、ツバメのマークのタクシーだったという。