結婚式を延期して (2011/4/3)
浅田孝枝さん(47)は、名古屋市内にある結婚式場の社長をしている。東日本大震災の影響で、何組かのカップルが挙式・披露宴の延期を余儀なくされているという。参列予定の親戚が被災してしまった。その苦労を考えると、とても自分たちだけが幸せな気分にはなれないと。
そんな中、新郎が自衛官だという新婦さんから電話が入った。急きょ、被災地で救援活動をするために現地に派遣されたのだという。挙式の予定は5月。本来なら、披露宴の打ち合わせなど準備で忙しい時期だが、それどころではない。「彼の帰りがいつになるかもわかりません。残念ですが、延期させてください」。新婦の気持ちを察すると胸が痛んだ。
もう一組。こちらは、新郎新婦の二人ともが自衛官だ。新郎が7月から沖縄に赴任することが決まった。新婦はそのまま名古屋勤務。そのため急ぎ6月に結婚式を挙げることにした。そこへ震災が起きた。仲間の多くが東北へ救援活動に出掛けた。二人は後方支援ということで、名古屋の基地で休みもなく忙しく働いている。とても結婚式の準備どころではないという。
浅田さんは「それが自衛官の仕事だから…と言えばそれまでのことかもしれません。人生で最大のイベントでもある結婚式。自分たちのことを後回しにしてまで、使命感に燃えて働いている方たちがいることに心打たれました。自分たちも頑張らなくちゃと元気をもらいました」とおっしゃる。「お仕事を全うされて帰還されることをお祈りしています。あらためて笑顔で集える日を心待ちにしています」と伝えたという。