「ほろほろ通信」とは

「ほろほろ通信」は、2006年4月から2018年4月までの12年間にわたり、中日新聞の愛知県内版に500回余り掲載された連載コラムです。当時、発行部数が160万部であったことから、勝手な想像ですが、ご家族や職場を含めると500万人位の方に読んでいただいているかもしれません。

「ほろほろ」とは、花びらや葉っぱ、そして涙が静かに零れ落ちる様のこと。心がポカポカして、ときには胸が熱くなる「ちょっといい話」のコーナーです。
毎週日曜日の朝刊に掲載されていたことから、「今日の話はいいねぇ」とか「泣けるよ~お父さんも読んでみて」などと家庭で話題になっているという声をよく耳にしました。また、小・中学校の先生方からは、「道徳やホームルームの時間に活用しています」というお便りも。生徒さんの感想文を送って下さる先生もいらっしゃいました。

このコラムの連載が始まるとき、編集者さんから二つの点をお願いされました。一つは「投稿者が主役で実名」であること。いま一つは、「物語性を重視し教訓話にしない」ことです。ときどき、匿名希望の投稿をいただきます。新聞に自分の名前が載るのは恥ずかしいと思われる方も多いでしょう。そんな時には、「実名の記載が決まり事であること」を説明し、「できましたら名前を書かせていただけませんか」とお願いします。もちろん、ご本人の意に反しない範囲で。

そのため、すべてが実名入りの「実話」です。「事実は小説より奇なり」と言います。実話だからこそ、心の奥底にジーンと沁みます。
読み手は、自分の人生と照らし合わせて、共感します。主人公の立場に成り代わって涙することもあるでしょう。「先日の話、感動しました。私にも同じような体験があります」と、感動の連鎖が起こり、またまた投稿が寄せられます。

ところで、人はどういうときに感動するのでしょうか?
「いい話」って、どんな話なのでしょうか?

7年間の連載を通じて、「感動いい話の法則」を見つけました。それは、「○○なのに○○だ」という意外性です。分かりやすい例で言うと、「小柄なのに大リーガー」。そう、イチローのことですね。誰が、これほどまでにイチローの活躍を想像したでしょう。期待はしていたけれど、期待を大きく上回る活躍が感動を生んだのです。同じように、「子どもなのに○○」「目が不自由なのに○○」「犬なのに○○」「お年寄りなのに○○」「他人なのに○○」。つまり、相手に全く期待していないときに、意外なことが起きた場合に人は感動するのです。

そしてもう一つの法則。

それは、「ピンチに天使の登場」です。
人は誰にでも悩みがあります。人生は成功することよりも、失敗することの方が多い。病気やけが、受験や就活の挫折、家族や友人との別れなど、人生のほとんどが失敗やトラブルの連続でしょう。 そんな辛い状態のとき、サッと目の前に手を差し伸べてくれる人がいる。そうです。ピンチに遭ったとき、天使が現れた瞬間です。

「車いすの生活を余儀なくされている人」「ダウン症の息子さんを持つ母親」「電車で気分が悪くなり戻してしまった人」「大切なカードが入った財布を落としてしまった人」「旅先で道に迷ってしまった人」「生まれたばかりの赤ちゃんが集中治療室に入れられた父親」「娘さんに冷たくされている父親」「広汎性発達障害の子どものことで悩む母親」「いじめに遭っている小学生」「自閉症のお子さんの散髪に苦労している母親」「息子さんの就職の内定が取り消されてショックの母親」・・・。

こんなさまざまなピンチに見舞われた人たちが、「ほろほろ通信」には登場します。
そんな辛い時、苦しい時、天使が現れます。その天使は、ときによって姿形が変わります。そして、天使たちの「一言」や「一つの行動」が感動の物語を紡ぎます。
ちょっと心が疲れたとき、ビタミン剤代わりに「ほろほろ」していただけたら幸いです。
そうそう、涙もろい方は、けっして人前では読まないでくださいね。そしてハンカチのご用意もお忘れなく。