メルマガ「志賀内泰弘の恩送り通信」トピックス№21「新作小説発売記念「出版裏話」~「表記ゆれ」とは何かご存じですか? 開くか閉じるか、それが問題だ!」

メルマガ「志賀内泰弘の恩送り通信」トピックス№21
「新作小説発売記念「出版裏話」~「表記ゆれ」とは何かご存じですか? 開くか閉じるか、それが問題だ!」
 
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☆今の私があるのは、友人・知人・両親・親戚・先輩・同僚・心の師など大勢の人たちの「おかげ」です。
いただいたたくさんの「御恩」を次の人へと「送る」ために、新作や約3.000本のアーカイブスから厳選してお届けします。
名付けて「志賀内泰弘の恩送り通信」です。
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小説の新刊の発売日が決まり、予約が始まりました。
2026年4月8日。
「京都一条戻橋 晴子のブックカフェ」(PHP文芸文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569905625

陰陽師の末裔の女性が主人公。
舞台は、京都のブックカフェです。

はじめて本を出版してから、26年が経ちます。
およそ、50冊。
書くのは大好きですが、書き上げた後、必ず通らないとならない仕事があります。それが、
「校正」
です。

何度読み返しても、「あれ? 間違ってた」という箇所が見つかります。
物書きになって間もない頃、編集者さんに、
「いや~情けないです」
と零したら、真顔で言われました。
「慰めではなく、そういうものです。自分で書いた文章は、自分ではミスに気が付かないものです。だから、校閲があるのです」

さて、
その校閲さんから、毎回、必ず指摘を受けることがあります。
それが、
「表記ゆれ」
です。
それは、一つの言葉が、二つ通り以上の表記があることです。
1、漢字とひらがな・・・「恐ろしい」か「おそろしい」か。
2、送り仮名・・・「行う」か「行なう」か。
3、接続詞・・・「及び」か「および」か。
4、年号・・・西暦か和暦か。
などなどです。
 
小説のように、300ページの本で、5ページに「行なう」と書かれているものが、250ページで「行う」と書かれていても、たぶん読者は気づかないでしょう。
でも、もと、同じページで、「行なう」「行う」が使われていたら、統一感のなさから違和感を覚えてしまうはずです。
それを防ぐため、「ゆれ」をなくすのは、たいへん重要です。

例えば、いつも悩ましいのが、
「つく」か「付く」かです。
「京都祇園もも吉庵のあまから帖」シリーズの第1巻で、

「そして気付くと、もも吉は恋に落ちていた。」

と、書きました。
すると、第2巻以降、「気づく」と書くと、「ゆれがあります。前回は、『気付く』でした」と指摘を受ける訳です。

実は、今、校正中の「陰陽師の末裔」の女性を主人公にした小説でも、校閲さんからのメッセージが、ゲラとともに届きました。

「付く/つく」が、全体的に混在しています。
 鉛筆でチェックを入れました」

そうなんです。
わかっているのです。
気を付けなきゃ、と。
でも、無意識に「ゆれて」しまっていたのです。

さてさて、
とはいうものの、必ず「ゆれる」ことが良くないこととは限らないのが、校正の難しいところです。

たとえば、「優しい」か「やさしい」か。
「京都祇園もも吉庵のあまから帖」シリーズでも、新作の小説でも基本的に「やさしい」と、ひらがなを使っています。
校正の専門用語で、
ひらがなを漢字にすることを「とじる」
反対に、漢字をひらがなにすることを「ひらく」といいます。

この「とじる」か「ひらく」が大問題。
毎度、毎度、頭を悩ませます。

「京都祇園もも吉庵のあまから帖」の第1巻で、あえて、「とじる」ことにした箇所があります。
その部分のセリフを3行抜粋しましょう。

「あなたが嫁いびりするからでしょ」
「とんでもない。こんな優しい姑がどこにいるのよ」
「どこがよ」
 
「やさしい姑」としても、何も問題はありません。
でも、あえて、「優しい姑」としました。
それには、2つの理由があります。

それは、漢字の持つ「イメージ力」です。
優」という漢字には、上品、しとやか、みやびやか、という意味があります。
どのように「やさしい」のかを具体的に説明するのにページを割くことが難しい。
そこで、「やさしい」という4文字を見るよりも、漢字にしたほうがパッと目にしただけで、この姑の人柄が伝わると考えたのです。

今一つの理由。
もしも、「ひらいて」、

「とんでもない。こんなやさしい姑がどこにいるのよ」

とすると、漢字は「姑」一文字だけで、ほぼひらがなばかりの文章になってしまう。
漢字が多すぎても、ウッと迫ってくるようで読みづらい。
しかし、反対に、ひらがなが多すぎても、言葉の繋がりを考えながら読まなくてはならないので、これまた読みづらい。

ということで、悩んで悩んで「閉じた」のです。

正直、面倒です。
そんな細かな点まで、読者は読み取ってくれるだろうか。
どっちでもいいんじゃないか。
しばしば、そう思います。

でも、もう15年ほど前、
「なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?」(ダイヤモンド社)という本を出版した時のことが、思い出されて、ハッとさせられるのです。
校正をしている時、編集者さんから、訂正する提案がありました。
それは、ある3文字でした。
彼の説明は極めて論理的でしたが、私にも「こだわり」がありました。私の意見を説明しました。
「どうしても…、でなければ変えたくありません。このままではいけませんか?」
と。すると編集者さんは答えました。
 「もちろん、原稿は著者のものなので、最終的には著者の意見を尊重します。この3文字を訂正しても、本の売上には0.1%も影響しないでしょう。いや、おそらく0.01%も」
 「では、こままでお願いします」
 「でも……本の売上とは、そういった0.01%を良くしていこうという積み重ねの結果だと思うのです。ここで、0.01%程度だから、どちらでもいいと、妥協することは好ましくありません」

私は、その瞬間、身体がブルブルと震えました。
よく言われます。
「小事は大事」
と。目の前の些細なことをないがしろにしていては、大きなことはできない。
小事の積み重ねが大きな結果を生む。
しかし、言うは易し行うは難し。
私は、たった「3文字」だからと、真剣に考えていなかったのです。
今一度、その3文字について激論を戦わせ、その結果、納得して彼の言う通りに訂正しました。

そんな0.01%のこだわりが、各ページに何か所もあるような本になりました。
私は、もうヘトヘトでしたが、出来上がったときの達成感は何物にも代えがたいものがありました。
そして、おかげさまで、その本は、ベストセラーになりました。

さてさてさて、
とはいうものの、小説を書いていると、ついつい流されます。
「まあ、いいや」
と。
と同時に、
「あかんあかん」
という声が、どこからか聞こえる。
その繰り返しの中で、日々書き続けています。

   
 
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