①「人脈は数ではない。真の友人を作るべし」

 2004年4月、「タテ型人脈のすすめ」(ソフトバンククリエィティブ)という本を上梓しました。
 その帯には、「使えない人脈」(量)から「使える人脈」(質)と謳ってあります。
 そのコピーに興味を持っていただいたのか、たいへん話題になりました。
 この本をテキストにして、何度もセミナーを開催しました。
 また、そのセミナーに参加いただ皆さんを中心にして発足した
「志賀内人脈塾」は、今も継続して勉強会を開催しています。
 たいへん古い本にも関わらず、いまだに感想の手紙が、出版社気付で送られてきます。
 おそらく、ネット社会が広まれば広まるほど、どうしたら仕事に活かせる「人脈」を作ることができるのかが、大きな課題になってきているからと考えます。
 SNSで簡単に「友達」を増やすことはできるけれど、
 それが仕事には容易に結びつかないことを体感する人が多いのではないか思います。 

 「人脈開拓術」というタイトルで経営者の皆さんに講演をしてきました (現在、講演はお休み中)。
 私は、全国のあらゆるジャンル・業界にスペシャリストの友人がいて、
 人から相談事があると、その友人たちに相談に乗ってもらい、問題を解決しています。私自身には何の取り柄もありませんが、友人たちのおかげで、人の役に立つ「橋渡し」をさせていただくことができています。

 世間では、「人脈」というものが、イメージとして悪く捉える人も多いようです。
 それは、なぜなのか?
 ズバリ、お金儲けをするために、「人脈」を作ろうとする人が多いことに辟易しているからだと思います。
 例えば、異業種交流会に参加すると、お金や仕事を「求める」人たちが目立ちます。
 出逢った人に商品を売ろうとする人。
 出逢った人が、自分の仕事に役に立たないかと思いを巡らせる人。
 「自分の役に立つ」人を求めて、勉強会などに参加し、「人脈作り」に励む人たちがいます。それは、「人脈」を作ると、何か得をすることがあると信じているからに他なりません。

 「人脈を作ろう」
と呼びかける私ですが、そんな「人脈作り」をはっきりと否定しています。
 「矛盾しているじゃないか」という声が聞こえそうです。
 でも、あえて言います。
 今までの「人脈作り」は意味がありません。
 いくら、「何か」を求めて「人脈」を作ろうとしても、仕事も人生も上手くはいきません。

 それは、なぜか?
 今まで、多くの人たちが口にしてきた「人脈」というのは、
「ギブ・アンド・テイク」を基本にしているからです。
それが、大きな勘違いの元です。
 「ギブ・アンド・テイク」というと、「お互い様」「もちつ、もたれつ」というフィフティー・フィフティーの良い関係のように思われます。それこそが錯覚なのです。

 何が、錯覚なのか?
 例えば、物を買う時に、オマケを付けてもらったとしましよう。オマケをもらえば誰でも嬉しいです。次の時、相手に頼まれ事をされました。
 「決算でノルマがたいへんだから、ちょっと大目に買って欲しい」
 と頼まれます。
 「この前、オマケをあげたじゃないか」と言われなくても、「お返しをしなくちゃ」と思い、嫌々でも買う羽目になります。
 つまり、「○○してもらった(テイク)」から「○○してあげる(ギブ)」訳です。
 それは、反対の立場から言うと、「○○してやったから(ギブ)、○○してもらう」です。
 これが、「ギブ・アンド・テイク」の落とし穴です。

 ギブするのは、テイクしてもらうために恩を売る道具になってしまう。
 そこには、「ギブしたら、テイクしてくれるに違いない」という打算があるのです。
 その打算は、誰もの心にミエミエです。
 そんな、「人脈」をいくら作っても、プラス・マイナス、イコール・ゼロです。
 ゼロと1の間の堂々巡りなのです。
 「○○してもらったら、○○してあげなければならない」というノルマを背負うようなものです。

 では、何が必要なのでしょう。
 言葉の解釈論ではなく、どうしたら仕事や人生が上手くゆくのか?
 それは、「親友」・・・いや、真の友達「真友(しんゆう)」を作ることです。
 「真友」に頼まれたら、見返りを期待しません。困っている時に、すぐに飛んで行って力になる。相手の喜ぶ顔が見られたら、それだけで充分。「○○してやったのに」とか「○○してもらったから」なんて一切考えない。打算というものが存在しない、相手に「見返りを期待しない」存在、それが「真友」です。親が子を思う気持ちと同じです。
 その「真友」を作りえる唯一無二の精神が「ギブ・アンド・ギブ」です。

 講演会で、いつも参加者の皆さんにこんな質問をして手を上げていただきます。
「ギブ・アンド・ギブ」という言葉を知っていますか?
サッと手を上げられるのは、平均すると2%くらいです。
「ギブ・アンド・テイクの間違いではないですか?」
とか、
「ギブばかりしていたら、損してしまうじゃないですか?」
と、逆に質問される方もいます。
「ギブ・アンド・ギブ」の精神の大切さを理解するどころか、その言葉すら知る人の少ないのが現状です。
 お互いに「求めず」して、ただ「与える」。
 自分は、見返りを期待しないで「与え」続けるだけで、「求めて」いないのに「与えて」くれる。それが「真友」の関係です。

「ギブ・アンド・ギブ」の精神で生きることが、
 一見、遠回りのようでいて、「人脈作り」の一番の近道なのです。