②「異業種交流会のパーティでは人に会うな!?」
志賀内泰弘著 「タテ型人脈のすすめ」(ソフトバンククリエィティブ)より
「妙なことを言うなぁ」
とお思いだろう。パーティに出て人に会うな、と言う。「どういうことだ。人と出逢うために参加しているのではないか」と。
まさしく、人と出逢うために参加するのである。
しかし、誰とでも会えばいい、というものではない。「この人は」というダイヤモンド鉱脈の人と会わなければならない。パーティに時間は、せいぜい1時間半である。この短い時間に、「ほんもの」を探さなければならないのだ。
「誰か商売のいいカモはいないかな」という、下心見え見えの人と付き合っている暇はない。
さて、実は私は、最近ではほとんど異業種交流会には出席することはない。
たしかにピーク時には、十くらいの会に顔を出していた。
名古屋という町は、200万人都市で、近県の経済圏を合わせれば一千万人くらいの人口がある。でも、どの会に出ても、
「やあ、ここでも会いましたね」
というくらい集まる人は同じ顔触れだ。だから、会に出るメリットが無くなってしまった。
その、どの会でも見かけたのが名刺コレクターである。名刺ホルダーを眺めては、人脈の達人になった気分に浸る人のことだ。それでは何も意味がない。
私のように本を出したり、いつもどこかでイベントを企画していると、主催者がパーティの席で気を効かしてくれて、
「ぜひ、志賀内さんと名刺交換を」
とPRしてくれる。すると、ワッと人が押し寄せてくる。本当に有り難い話だ。そして、いつものように、名刺をいただいた人には、必ずハガキを書く。
でも、その人から返事の来ることはほとんどない。その度に、虚しい思いをしたものだ。
そこである時、意を決して、名刺交換するのをやめてしまった。
会には出席するが立食パーティーなどで歓談する際にも、胸に名札すら付けなかった。人が近づいて来る気配がすると逃げた。つまり、せっかくの会で「人と会うことをやめた」のだ。
「そんなバカな」
とお思いだろう。これにはもちろん、秘策があった。
一回のパーティで会う人は一人きりにしよう、と決めたのだ。会場では、主宰者か顔見知りの仲の良い参加者を探す。そして、こそこそと近づいて耳打ちする。
「今日の出席者の中で、誰か特別に面白い人を一人だけ紹介してください」
とお願いするのだ。すると、それは「誰々の紹介」ということで、いきなり見ず知らずの人と名刺交換するのとは全く違った、信頼の結びつきが生まれる。
もしもそこで、意気投合すれば早々に会を抜け出して、他のお店でお互いのことを話し合うわけだ。たくさんの人と出会うのが目的ではない。数ではない、質である。それが「タテ型人脈力」。異業種交流会は、「この人は」という人を探す場なのである。