③「金脈は人脈から生まれる。・・・柳生家の家訓」

志賀内泰弘著 「タテ型人脈のすすめ」(ソフトバンククリエィティブ)より

 金脈は、人脈から生まれる。そして、人脈は、一つひとつのご縁を活かした者にのみ、培われるものである。
 「柳生家の家訓」というものがある。ご縁の大切さを語るとき、よく例に掲げられる。

 「小才は、縁に出会って縁に気づかず
  中才は、縁に気づいて縁を生かさず
  大才は、袖すり合うも、この縁を生かす」

 東京は江戸川区にある下町の本屋さん「読書のすすめ」のオーナー店長・清水克衛さんは、これを実践して人生が変わった一人である。
 ある日のこと、一人の男性客がふらっと店にやってきた。男性は、「探していた本が見つかった」と嬉しそうにレジにやってきた。清水さんは、本の好みが同じであったことから、何だか嬉しくなり、あれもこれもと、自分の好きな本を取り出しては熱く語った。波長がドンピシャ合ったわけだ。
 その男性は、「良い本を教えてもらった」お礼にと、驚いたことにポンッと一万円をくれたという(本の代金ではないので、念のため)。なんとも気風のいい人だ。
 男性は、それを機に、何度か店を訪れるようになった。そして、何度目かのこと。
 「ポップを書いてあげよう」
と筆を執り、大きな紙にスラスラッと書き始めた。
 するとどうだろう。それを店内に立てると、不思議なことに売上が今まで以上に増えていくではないか。その後も、商いの様々なアドバイスを受けた。
 それからまたしばらくして、大変なことを知った。男性の名は、斎藤一人さんといった。そう、今では誰もが知っている、「銀座まるかん」の創業者で納税額日本一の大金持ちだ。
 もしも、「知らないオジサンが生意気に何か言っている」くらいの気持ちで、話を聞かなかったら。まさしく、「大才は、袖すり合うも、この縁を生かす」。何しろ、商売の神様だから、清水さんの資質に気づいていたのだろう。清水さんにしても、ご縁を大切にする心と、教えをいただくという素直な心があったからこそ、アドバイスを生かせたのだろう。
 お互いの「縁を生かす」という気持ちが、出会いと繁盛を生んだのだ。
 これは物語の序の口だった。今度は、自分が斎藤一人さんから学んだ知識を、多くの人に伝える仕事を始めた。斎藤一人さんの教えを著した「斎藤一人のツキを呼ぶ言葉」(東洋経済新報社)は、ベストセラーになり、華々しく作家としてもデビューを果たした。
 本屋さんという職業を生かし、多くの人に本の素晴らしさを伝える仕事も始めた。
 NPO「読書普及協会」がそれである。
 人生を変えてしまうかもしれない本を紹介したり、幼い子供たちに読み聞かせの会を催したりと、自分が学んだ知識を人に伝える活動をしている。
 もしも、柳生家の家訓に続きがあるなら、こうなるだろう。
「超人は、縁を呼びこみ、これを生かし
 また、縁の輪を自ら広げる」
一つひとつのご縁を大切にし、それを多くの人に繋げることが、人脈の極意である。