榎本好根さんプロフィール

柔道七段、心は八段、やさしさ十段

柔道整復師
榎本接骨治療院院長
国士舘高校、国士舘大学卒業
柔道七段
愛知みずほ大学非常勤講師
名古屋市柔道協会評議員

2010年、2011年日本マスターズ柔道大会
 講道館護身術1位
 極の形1位
2013年日本マスターズ柔道大会 
 講道館五つの形1位

公認形審査員

志賀内泰弘

柔道七段、心は八段、やさしさ十段

 もう20年以上も、お世話になっているのが、榎本接骨治療院の榎本好根先生です。
 柔道七段。
 ご本人は、
 「たいしたことはないです」
 と言われますが、そうそう簡単になれる段位ではありません。
 さまざまな基準により昇段が決まるのですが、修行の期間が重視されることから、ある程度年齢に達しないと、上の段には上がれません。
 2020東京オリンピックで金メダルを取った阿部一二三選手や大野将平選手でも五段です。
 初段から五段は黒帯、六段から八段は紅白帯、九段と十段は赤帯です。
 紅白と赤の帯は「名誉的」な意味合いが大きいので、実際の試合では黒帯を締めることが多いそうです

 さて、榎本先生は、聞くも涙語るも涙の練習を積み重ねて来られて、現在の立ち位置まで上がって来られました。
 肉体が「強い」のは当然のことなのですが、心根が優しくて、高齢の患者さんたちに慕われています。
「膝が痛い」「腰が痛い」という訴えを聞くだけでなく、愚痴や弱音にも耳を傾け、時にさりげなくアドバイスをされます。
 そのお礼でしょう。
 接骨院のご近所のお婆ちゃんが、毎日のように「これ食べてよ」と、夕ご飯の総菜を持って来られます。

 毎日新聞で連載させていただいているコラム「虹を待つ午後」で、榎本先生から教えていただいた話を、書かせていただいたことがあります。
 その一部を抜粋して紹介させてください。


 さて、私が腱鞘炎になった時の話。「あっ、痛い!」と思った瞬間、激痛でペンを持てなくなった。接骨院へ駆け込む。柔道整復師の榎本先生に「突然、痛くなって」と訴えると、「そういうものです」と言われた。
 「人間の身体はね、ある一定のライン、例えば90%のところまでは耐えられるようにできているんです。痛みは徐々にひどくなるわけではない。90%を1%でも超えた瞬間に、ドドーンッと症状が出るんですよ。それを防ぐには、70%とか80%とかのラインで休憩しないといけないんです。突然ではなく予兆はあるはず。指が強張るとか、握力が弱くなるとか。それに早く気づくことが大切なんですよ」

 確かにその通り。数日前から、なんとなく指に違和感を感じていたのだ。言うは易し行うは難し。ついつい「まだまだ行ける」と思って頑張ってしまうのが人の性(さが)だ。「もうちょっとだけ」と心身を酷使して、命にかかわることにでもなったら元も子もない。以来、勝手に「91%の法則」と名付けて、日頃の仕事のやり過ぎのブレーキにしている。
 榎本先生に尋ねた。
「でも、そのラインってどうしたらわかるんですか」
と。
 すると、
 「正直、難しいですねぇ。自分の限界を一度体験しておくということですかね。けがや病気というのは、これ以上やるとヤバイということを学ぶ人生の良い機会でもあるんですよ。今回の志賀内さんのようにね」
 先生はさらに言う。
 「実は、心も同じなんです。ストレスが貯まっていると思ったら、早く解消するか休むことです。心の病も、突然来ることがある。幸か不幸か、人間っていうのは90%のラインまで頑張れてしまうんですよね」。


 私は、この榎本先生から学んだ「91%の法則」教えを、生きる上での大切な指標にしています。
ついつい、我を忘れて頑張ってしまう自分に「今、何パーセントだ?」と、問いかける癖をつけるようにしています。
 それでも締切り間際になると、頑張り過ぎて腱鞘炎が再発したり、ストレスでお腹の具合が崩れたりします。
 すべては健康あってのことですから。

 榎本先生から学んだことを、2つエッセイにまとめて発表したことがあります。
 「何のために、掃除をするのか・・・柔道七段。心は八段」
と、
「「残身」で、その人がどういう人かわかる」
です。ぜひ、お読みいただけたら幸いです。