ひとつの言葉、ひとつの表情
ヒダカズのココロの授業
比田井和孝
「ひとつの言葉、ひとつの表情、ひとつの行動で人を幸せにできる」
先日、私は松山での講演を終え、友人と二人で羽田行きの飛行機に乗りました。私はその日、寝不足でした。今回は、普段とは違う形のイベントだったので、夜遅くまで何度もリハーサルをしていたため、5時間程度しか眠れなかったんです。私にとっての5時間はもう「徹夜」に匹敵します(笑)。その「徹夜明け状態」の中、ドリンク剤を飲みながらなんとか無事にイベントを終え、「もう、帰りの飛行機の中、絶対に寝る…」と思っていました。それだけ燃え尽きていたということです。
そんなところに、CA(客室乗務員)の方が飲み物のサービスでいらっしゃいました。私、ちょっと迷いながらも「今日はコンソメスープにしよう」と心の中で決めました。ところが、私の友人が先に「リンゴジュースお願いします!」と言ったのを聞いて、私、「リンゴジュースもいいなぁ…」と思ったんです。だからと言って、コンソメスープも捨てがたい…。かなり迷いました。そこに、「お客様はいかがいたしますか?」とCAさん。私、思わず、「あの~…これ、一人で二つお願いしてもいいものなんでしょうか…?」と申し訳なさそうに聞いてしまったんです。するとCAさんから、こんな言葉が返ってきました。「もちろんです! 二つでも、三つでも、四つでもいいですよ!」と。それも最高の笑顔で。
私は、多分、「いいですよ」と言ってくれるとは思っていましたが、ちょっと、ジョークも込めて「四つでもいいんですよ(笑)」と言ってくれたのがなんか嬉しかったんですね。私、「それでは、リンゴジュースとコンソメスープをお願いします」と言いました。すると、「その組み合わせで注文されるお客様、多いんですよ」とCAさん。「そうですか! やっぱり…。一度この組み合わせをやってみたかったんです! 夢が叶いました! ありがとうございます!」
もう、こうなると私、調子に乗っちゃいます。「ちなみに、このリンゴジュースとコンソメスープはどんな順番で飲んだらいいんでしょうか?」と、どうでもいいことをききました。どうでもいいのですが、この質問にCAさんがなんて答えてくれるかが気になったんです。すると、一瞬考えて、「コンソメスープはお熱いので、最初に冷たいリンゴジュースを飲んで、その後にコンソメスープ。またそのあとにリンゴジュースがよろしいかと…(笑)」とおっしゃいました。どうですか? 私のどうでもいい質問に、ちゃんと理由までつけて答えてくれたんです。それが嬉しくて、「なるほど! ナイスアドバイスです!」と言って、二つの飲み物を受け取りました。CAさんは笑顔で後ろのお客様のところに移動していきました。その後、もちろん、アドバイス通りリンゴジュース→コンソメスープ→リンゴジュースと飲んだのは言うまでもありません。
そうしているうちに、CAさんが後ろの方から戻ってきたので、「先ほどのアドバイス通りいただきました。 素晴らしいアドバイスでした! ありがとうございました!」と言うと、「お客様は東京へはお出かけですか? それともお帰りですか?」とCAさん。「帰りなんです! おかげで、気持ちよく帰れます!」と私。すると…この後のCAさんの言葉が私のハートをキュンとさせました。「お客様のおかげで、私も頑張れそうです…」ですって。この言葉! もちろん、その言い方、表情、すべてが私の心をがっちり掴んだんです。「こちらこそ頑張れそうです!」と言ったのは言うまでもありません。
さっきも書きましたが、私、「徹夜状態」だったんです。普通なら間違いなく寝ています。ところが、そのあとの一時間半の間、友人とそのCAさんのお話でメチャメチャ盛り上がったんです。「素晴らしいコミュニケーション能力ですね!」「プロの仕事ですね!」「気持ちいいですね!」一時間半がアッという間でした。ものすごく楽しい時間だったんです。それだけエネルギーをいただいたんです。おかげで、飛行機を降りた後の新幹線でもまったく眠くならずに、仕事もはかどりました。CAさんがいなかったら、飛行機の中でも熟睡。新幹線の中でも熟睡だったことでしょう。
私の人生の師匠、佐藤芳直さんが言っています。「ひとつの言葉、ひとつの表情、ひとつの行動で、人を幸せにすることができるんです」と。私はまさに、CAさんの一言で幸せな気持ちになれました。CAの富永さん、「いい仕事」しますね! 本当に素敵な出会いでした。