子どもを幸せにするキラキラ星大作戦

私が一番受けたい「ココロの授業」

比田井美恵

子どもを幸せにするキラキラ星大作戦

先日、「あこがれ先生プロジェクトin長野」が行われました。これは、講演家の中村文昭さんが「先生が元気なら子供が元気になる、子供が元気なら日本が元気になる!」と考え、「頑張っている先生たちのことを伝えて、日本中の先生たちを元気にしよう!」という思いで始めたものです。二〇〇八年、三重県での開催を皮切りに、埼玉、愛知、長崎、群馬、茨城など全国各地で開催され、長野は今回が初めて。地元の先生や会社員など有志の方が集まり、手弁当で開催してくださったのです。

その中で、福岡県北九州市のあやめが丘小学校の西原綾子先生の講演がありました。テーマは「キラキラ星大作戦で日本一幸せなクラスづくり」。西原先生は「何のために先生になったのか」を話して下さいました。私自身も、小さい頃から先生になりたかったのですが、その理由は、両親が先生だったから。教師として、休みもなく一生懸命に教える二人を誇りに思い、小学校で出会ったアツい女性教師に憧れ、あんな先生になりたい!…と思うようになったのです。きっと、先生を志す人の多くは、こんな風に身近な先生に憧れたことがきっかけだと思うのですが、西原先生はまったく違いました。
西原先生は「この世の中を幸せにしたい!」という思いからスタートしました。そして「そのためには、どんな仕事をしたらいいのか?」と考え、「世の中を変えようと自分一人が頑張るよりも、同じ思いの人をたくさん育てた方が、もっと早く世の中を変えられる!」…と気付き、「人を幸せにしたいと心から願い、人を大切にできる子どもを育てよう!」と、先生になったのです。何度も何度も教員採用試験を受け…百倍近くの倍率をくぐりぬけて晴れて先生になった西原先生は、二年目に、落ち着かないクラスを任されました。
そのクラスは他人を批判し、自分に自信がなく、男女の仲が悪く、まとまりがありませんでした。西原先生は「生徒ひとりひとりに、自分自身がいかに素晴らしい存在であるかを気付かせてあげることが教師の使命」と考え、まずは自分が生徒のいいところを見つけ、褒めることから始めました。
さらに、クラス全員で取り組んだのが「キラキラ星大作戦」。友達のいいところを星の形の紙に書いて部屋中に貼っていったのです。最初はなかなかうまくいきませんでしたが、西原先生がいろんな工夫をし、ひとりひとりに声を掛け、保護者にも協力をしてもらったところ、少しずつキラキラ星が増えていき…最終的には、教室をはみ出て、廊下までいっぱいになるほどになったのです。その結果、初めは「どうせ自分なんて…」と言っていた子も、元気にリーダーシップが取れるまでになり…初めはわざと隣の席と机を離して座っていたような子達が、ピタッと机をくっつけるようになり…「自分たちのクラスは最高のクラス!」と言えるようにまでなったのです。
西原先生は、先生としてだけでなく、女性としても、人間としても、とても素敵な方でした。大らかで、感情表現が豊かで素直で元気で…きっと、子ども達は西原先生が大好きなのでしょう。だからこそ、先生の提案するキラキラ星大作戦にも一生懸命に取り組み、また、先生が本気で向き合ってくれるからこそ、それに応えたいと頑張ったのでしょうね。私は、こんな先生が一人でも増えてほしいと強く思いました。その意味でも「あこがれ先生プロジェクト」が果たす役割は大きいと思います。

進行役の中村文昭さんは最後にこう語りました。「これからが本当の『あこがれ先生』です。せっかくいい話を聴いても、会場の外に出て三歩、歩いたとたんに、『でもなぁ~…あの人たちは特別やし』『でもよぉ~、うちの学校はこうだし…』…なんて『でもでも星人』になっているようでは、今日のこの時間は無駄だったことになります。そうじゃなくて…できない理由を言うんじゃなくて、ほんのちっちゃなことでいいから、『俺、子供たちのために、こんなことからはじめてみようかな』って今日から動くことを話してほしいんです。」

後日、嬉しいニュースが入ってきました。このイベントに参加した長野の城山小学校の古澤希先生が、早速行動されたのです。学級新聞にはこう書かれていました。
「キラキラ星大作戦」が、担任の予想をこえました。友だちのいい所を星に書き、その友だちにわたします。もらった子は、星に書かれた褒め言葉や感謝の言葉にニッコリ。とてもいい笑顔になります。「こんなこと書いてもらった!」とうれしそうに報告してくれる子もいます。…それを黒い台紙にはり、教室の壁にはります。四六七個の星が、天の川のように輝いています。心のヤミを光でうめるキラキラ星をさらに増やしていって、みんながハッピーな気持ちになれるクラスをめざします。」
今回、文昭さんの思いに共感した西原先生が語り、それに感動した古澤先生がしっかり実践し、着実に子どもたちの笑顔が増えました。「あこがれ先生長野」をきっかけに、少しずつ動き出しているんですね。一人一人の行動が少しずつ大きなパワーとなり、良い日本につながっていくんだと確信できた、そんな嬉しい出来事でした。文昭さんの好きな言葉を思い出しました。「俺達は微力だけど、無力ではない」。まさにその通りですね。

※あこがれ先生プロジェクトに興味のある方は、中村文昭さんの会社(有)クロフネカンパニーにお問い合わせください。