木下晴弘「感動が人を動かす」5

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「感動が人を動かす」5
「真実の瞬間」
「涙の数だけ大きくなれる!」著者  木下 晴弘

今回は、小さなプチ紳士のお話です。2010年12月19日は日曜日でした。この日は一日中セミナー講師を務めさせていただき、疲れた身体を引きずりながら宿泊先のホテルに向かう途中でした。
私の乗ったメトロは日曜日の20時ごろという時間帯もあってか乗客の方は結構少なく、全員がゆったり着席できる状況でした。
ある駅でお母さんと息子さんが乗ってこられ、私の隣に座られました。そこで聴いてしまった親子の会話に私は疲れを癒されることになるのです。息子さんはおそらく中学生。お母さんは40歳前半といったところでしょうか。

息子さん「お母さん。期末テストが終わったら23日(この日は祝日です)に友達が家に来るの。そのときに新しいゲームソフトで遊びたいんだ。そこでお願いなんだけど、今年のクリスマスプレゼントのゲームソフトは23日にもらえないかなぁ」
お母さん「あら、いいわよ。じゃあ明日買っておいてあげるわね」
息子さん「うん、ありがとう。でも一つ気がかりなことがあるんだ」
お母さん「どうしたの?」
息子さん「○○のことなんだけど・・・」(○○とはどうやら小学生の妹さんのことのようです)
お母さん「○○がどうしたの?」
息子さん「あいつ、まだサンタさんは本当にいるって思ってるようなんだ。僕それとなく聞いてみたんだ」
お母さん「そういえばそうねぇ」
息子さん「僕が一足先にクリスマスプレゼントを貰っちゃうと、○○の夢を壊してしまうと思うんだ。だから何かいい方法はないかってずっと考えてる」
お母さん「・・・」
息子さん「僕が家で友達と新しいソフトで遊んでたらあいつ絶対に気づくよ。お母さん何かいい方法ない?」
お母さん「・・・わかった。じゃあこんなのはどう?我が家ではサンタさんは小学生だけに来る。中学生になればサンタさんの代わりにお母さんがプレゼントを買ってあげる。だからお兄ちゃんの今年のプレゼントはお母さんからの贈り物。中学生になるころには彼女もわかっていると思うよ。どうかしら?」
息子さん「うん!それいいね!そうしよう!そしたら○○は今年もきっとサンタさんの夢が見られるよね?」
お母さん「うん、お母さんもそう思うわ」

幸せそうに笑うお母さんと息子さん。
『ああ、こんな会話を聞かせてもらえた私こそが一番の幸せ者だよなぁ』
私は妹想いの彼よりもさらに一足早く、クリスマスプレゼントを貰ったのです。
『さぁ!明日も頑張ろう!』急に元気が湧き出た素敵なひとときでした。