「なぜ、『そうじ』や『寄付』をすると、人生が上手くゆくのか?」

カレーハウスCoCo壱番屋創業者 宗次德二さんに聞く
「なぜ、『そうじ』や『寄付』をすると、人生が上手くゆくのか?」

インタビュアー 志賀内泰弘

ココイチの愛称で誰もが知るカレーハウスCoCo壱番屋の創業者である宗次德二さんに、インタビューを試みました。月刊紙「プチ紳士からの手紙」の読者の皆さんには、表紙の「言葉」でも、すっかりお馴染みですね。
宗次さんは、テレビや新聞、雑誌など、今まで多くの取材を受けて来られましたが、その多くは「ココイチを成功させた秘訣」という経営面にスポットを当てたものでした。テレビ東京系の人気番組「カンブリア宮殿」でもそうでした。
しかし、今回は、宗次さんが創業以来続けている「そうじ」や「寄付」といった「社会貢献」に的を絞ってお尋ねしました。経営者のみならずで、すべての人に役立つ「幸せになれる生き方論」を伺うことができました。宗次さんとは、もう25年くらいも前からお付き合いさせていただいていますが(心の師です)、改めて1対1でじっくりとお話を伺うのは初めて。ワクワクしつつ、宗次さんが代表を務めるクラシック専門ホール「宗次ホール」を訪ねました。

志賀内
「今日は、お忙しい中、ありがとうございます」

宗次
「こちらこそ、よろしくお願いします」

――ココイチの創業者ということで有名ですが、その一方で「そうじ」や「寄付」などの「社会貢献」に熱心でいらっしゃることに、日頃から頭の下がる思いでいます。今日は、「経営」のことはさておき、「社会貢献」についてのお話を伺わせてください。私の知っている範囲で言うと、宗次さんは、次の5つのことをされておられますね。
1、「そうじ」・・・早起きして地域の清掃をする。365日雨の日も風の日も。
2、「NPОイエローエンジェル」・・・夢と目標を持つ団体・個人を応援
3、「宗次ホール」・・・クラシック音楽の普及を通して、人や社会を明るくする
4、ココイチの法人として、経常利益の1%の寄付やバザーなどにカレーを提供
5、宗次さん個人として、ホームレスを支援

宗次
「そんなところですね」

365日、雨の日も風の日も雪の日も

――まず、「そうじ」について教えてください。そもそも、「そうじ」を始められたのは、いつからですか?宗次「きっかけ、と言われると困りますが、ココイチを開業した時から店舗の周りを夫婦で「そうじ」していました。でも、それは誰もがやっている普通のことですよね。本格的に始めたのは、ココイチが100店舗くらいになった頃からでしょうか。社内で「くだらない会」というのを作ったんです」

――え??「くだらない・・・会」って何ですか?
宗次「これはね、『圧倒的に多くの人がバカバカしくて、くだらないと思うことを本気でやり続ける会』という会の略なんですよ。「そうじ」ってね、辛くって誰もやりたくないのね。キレイになるのはいいことだ、とわかっていてもできないし、続かない。それが自分の家の中じゃなくて、会社の周りとか、公園とか道路とか公共の場の「そうじ」となるとよけいにバカバカしいと思ってしまう。「そうじ」する暇があったら、お金儲けとか趣味に時間を当てた方がいいとか思う人が多いかもしれません。そんなバカバカしくてくだらない「そうじ」を、みんなで早起きして一緒にやろうって、社員に呼びかけたんですよ。毎朝、6時に集合して30分くらい会社周辺を「そうじ」しました。ゴミ袋を片手に、軍手で。その後、20分くらいかけて、ゴミの分別をします」

――何人くらいの人たちが参加されましたか?
宗次「毎日30人くらいかな」

――それは、全社員?
宗次「いえいえ、20%くらいの人たちです。私は強制はしませんでした。だって、無理やり「そうじ」をしても楽しくないでしょ。ココイチの接客の基本ですが「ニコ・キビ・ハキ」・・・つまり、ニコニコ・キビキビ・ハキハキしながら「そうじ」をしなさいって言ってます。6時から「そうじ」に参加するとなると、6時出社ってことだから、そりゃぁ辛いでしょう。休みの日も365日続けるわけだから」

――雨の日もやるんですか?
宗次「そりゃそうです。365日、雨の日も風の日も雪の日も。続けることが大切なんですよ」

――え?!雪の日もですか?
宗次「もちろん!台風なんて来ると、逆に燃えるんです。やるぞーって。風邪をひいて熱がある日もやります。だけど、それは私の話。みんなには強制はしない。最低ラインがあって、もし参加するなら、月30日のうち10日以上出席することが条件なんです。ギリギリ10日っていう人が多かったかな。今月はあと何日って数えながら。私は「そんなこと考えるより、毎日参加した方が気が楽だよって言ってました。でも、みんなよく参加してくれましたよね。別名『早起き会』って呼んでいました」

――25年くらい前に、初めてお目にかかった頃、ボスジャンの話をされていたことを思い出しました。
宗次「そうそう、よく覚えてましたね。あの頃、サントリーの『ボス』っていう缶コーヒーが売り出されて、スタジアムジャンバー(通称ボスジャン)の景品があってね。缶に付いているシールを何枚か集めると抽選でもらえました。私の『そうじ』の担当区域は、ココイチ本社近くを通っている国道22号線沿いの側道だったから、車のドライバーの中には窓から平気でポイと空き缶を道に捨てて行くんですよ。だから、缶とともにシールがたくさん集まってしまって、ボスジャンを何着ももらいました。他にもソニーのゲームソフトなんて何十台もですよ」

――おお!「そうじ」をすると、いいことがありますね。

「行動」すると「心」が変る
宗次「『そうじ』は、一日の始まりのウォーミングアップに最適なんです。心も頭も身体も、『そうじ』をして汗をかくことで準備運動になるんです。それだけで充分、いいこと、効果がありますね。何より、地域がキレイになると、地域の人たちに喜んでもらえます。それが一番でしょう。

――ちょっと意地悪な質問ですが、社員さんの中には「嫌々」っていう人もいたのでは?
宗次「たぶん、いたでしょうね。聞いてはいないけど。社長の顔色を見て『参加しないとヤバイかな』なんて。でもね、それでも、『やる』のと『やらない』のでは大きな違いがあります。社長がやっているから、仕方なく始めた人でも、まず行動を起こすことが大切です。「行動」を起こすと、それがやがて「習慣化」します。すると、今度は「心」が変るんです。

――わかります。形から入ることも大切なんですよね。
宗次「でもね、そんなバカバカしいことをやろう!って声を掛けたわけだけど、その分、給料が増えるわけじゃないから何かの形で、ご褒美というか感謝の気持ちを参加者に伝えたかった。そこで、メンバー全員で毎年1回、旅行に行きました。札幌へカニを食べに行ったり、ゴルフツアーをしたり、上海など海外にも行きました」

――そのお金は?
宗次「もちろん、私のポケットマネーです。まだ上場前のことで給料の中からでしたが、気前よく出しました。そうじ(・・・)仲間(・・)ですからね。嬉しい出費でしたよ。」

毎朝3時55分に起きる!
――ココイチの社長を退任された後、5年を経てクラシック専門のコンサートホール「宗次ホール」をオープンされました。宗次「作曲家の三枝成彰さんの監修の元で建設し、2007年3月29日に、バイオリニストの五嶋龍さんにオープニングリサイタルをしていただきました。現在はここの代表として、できうる限りお客様のお出迎えとお見送りをしています。もちろん、一番後ろの席でコンサートも聴きます。そう言えば、志賀内さんにも開設当時の2年間、日替わり支配人をお願いしましたね」

――はい、他の方4人と交代で一日支配人をさせていただきました。クラシックなんてわからないので、冷や汗をいっぱいかきました。今では、年間約400公演も企画するまでになったそうですね。
宗次「午前11時30分から1時間の『ランチタイムコンサート』もやっています。千円という低価格で、手軽に忙しい人たちにもクラシックを聴いていただきたくて始めました。おかげさまで好評です」

――クラシック音楽を通して、みんなの心を豊かにしようという・・・これも社会貢献の一つとして捉えてもいいのでしょうね。チャリティシートを用意されたり、お客様が気軽に募金できるようにと、さまざまなボランティア団体の募金箱が館内に設置されていますよね。さて、引き続き、現在の「そうじ」の活動にについて教えてください。
宗次「宗次ホールのすぐ近くの広小路通(名古屋市中区の久屋大通り中日ビルから東新町交差点)の歩道と中央分離帯413メートルを、これまた365日、「そうじ」をしています。ここを勝手に、『イエローエンジェル通り』と呼んでいます(笑)」

――またまた早起きしてなんですよね。
宗次「朝は毎日、3時55分に起きます。今はホールのビルの上階でも寝起きしていますから、すぐに下へ降りて来てタイムカードをカシャと押します。だから毎日、出勤時間は4時くらい(笑)。タイムカードをお見せましょうか。
(確かに、連日午前3時58分とか4時2分とか・・・なかには、1時55分なんていう日も。いったい、どうなっているのやら目が白黒)
宗次「その後、一仕事して、6時30分から8時までが「そうじ」の時間です」

――「花も植えておられますよね。今日も地下鉄の駅からここまで歩いて来る間に拝見しました。」
宗次「はい、冬から春にかけてはパンジー。夏から秋はハイビスカス。ココイチの色の『黄色』です。ちゃんと、市役所の許可をいただいてやっています。最初はもう、雑草がボーボーと生い茂ってたいへんでした。空き缶や弁当容器のゴミなんかが歩道や中央分離帯に山ほど捨てられていて。歩行者やドライバーがポイ捨てするのでしょう。行政も予算が取れなくて仕方なく放置してあったのです。『そうじ』だけでなく、ここを通る皆さんが気持ちよくなるようにと花の手入れ・管理をしています。」

お金は「儲け方」より「使い方」の方が難しい
――ついつい貧乏人は下世話なことを聞きたくなるのですが、花の苗を買うのにもお金がかかりますよね。
宗次「ちょうど今、パンジーを植えたところですが7.200株あります。夏のハイビスカスは2,200株です。年間、200万円くらいかかります。全部ポケットマネーです」

――それはスゴイ!お金持ちは違うなぁ。
宗次「私はクラシックを聴く以外に趣味がありませんからね。「そうじ」が趣味、街をキレイにするのが趣味だもの。他の人だったら、映画を観に行ったりするのにお金を使うし、頻繁に海外旅行やゴルフに行ったり、贅沢な装飾品を買ったりする人もいるでしょ。それと同じです」

――同じ趣味だけど、お金の使い道が違うだけということですか?
宗次「そうそう!お金はね、儲けるよりも使い方の方が難しいんですよ。ぜひ、みなさんにも、人のためにお金を使ってほしいですね。高い時計をはめたり、高級レストランでディナーを食べたりと贅沢するのもいいけど、人の為にもお金を使って欲しいです」

――またまた卑しい発想ですが、そう言えるのもお金持ちだから・・・。
宗次「それは違います(急に顔色が変わる)。金額の多寡のことを言っているわけではありません。一日の終わりに、財布に小銭が残っていたら、10円でも100円でもいいからビンに貯めておく。それを募金に充てる。それなら誰でもできるでしょ」

後悔するから、そのまま見過ごせない
――たしかにできます。大金持ちでも、ビル・ゲイツみたいに私財を投じてボランティアをする人もいれば、死ぬまで金儲けしか頭にない人もいますよね。たいへん失礼しました。やる気があれば、お金持ちかどうかなんて関係ありませんね。ところで、せっかく「募金」の話が出たので、続けて「寄付」についてお尋ねします。個人でも、いつも寄付をされておられますよね。ホームレスの方に千円札を渡されると聞きましたが?
宗次「コンビニの前でね、あまりキレイとはいえない服を来た人をよく見かけます。なんだか病気なのか体調も悪そう。そうそう志賀内さんみたいな人(笑)。

――例えがわかりやすいです(苦笑)
宗次「そのコンビニで熱いお茶とオニギリを買ってね、そっと二千円と一緒に手渡すんです。出張先の東京でのことが多いかな。特に有楽町とか。この前もね、八重洲の交番の前でホームレスの女性が座り込んでいました。どうも足にケガをしているらしくて。交番のお巡りさんに2万円差し出して『あの人を病院に連れて行ってもらえませんか』って言ったら、『今日、連れて行く予定だから安心して下さい』ってお金を返されてしまいました。こんな時に、そのまま見過ごして通り過ぎると、あとになって後悔するんです。一旦通り過ぎてから考え直して、思い切って戻って寄付する。今まで、100回、200回と数え切れないくらいやってます」

――頭が下がります。
宗次「(名古屋市中区の)伏見の交差点にいつもいるホームレスさん知ってますか?」

――いいえ・・・。
宗次「ずっとそこに住んでいるみたいなんだけど、あんな屋根のないところに居たら、冬は凍死しちゃいますよね。一時、2、3ヶ月姿が見えなかったので心配してたんだけど、また現れて。この冬、寝袋をプレゼントしたんです。マイナス10度まで防寒できる1万円くらいするやつ。実際に、寒い時期には何人も亡くなるでしょ。中には、NPОが仕事の世話をしようとするんだけど、どうしても働けなくてホームレスに戻ってしまう人もいますよね。だからといって、凍えて死んでもいいということにはなりませんから。寝袋はこの数年で、20人くらいに持って行きました。

寄付する人の人生が、上手くいかないはずはない
――「寄付」をすると、何か自分にいいことがあるのでしょうか?
宗次「寄付する時、見返りはまったく考えていません。また、見返りなんて期待してはいけません。「ありがとう」とさえ、言われたいとは思いません。褒めてもらいたいとも思ってません。ある時、大学に寄付をしたら、叙勲したいと言われました。表彰や勲章が欲しくて寄付したわけではありません。役に立って、喜んでもらえたらそれでいい。だから叙勲は辞退しました。「寄付」は、生き方というか、人としての姿勢の問題だと思いますよ。第一、『寄付』する側の立場の方が、『寄付』してもらう立場の人より喜びが大きいでしょ。」

――姿勢ですか?
宗次「『俺さえ良ければいい』というという人は、「寄付」なんてしません。そういう「エゴ」の強い人は、人生も上手くゆくはずがない。何か見返り、打算があって「寄付」するのも同じです。偽善でも駄目ですね。本当に困った人を見て、身を削ってでも「助けたい」と思う純粋な気持ちがある人の人生が上手くゆくのです。『みんなのおかげで、今の自分がある』という感謝の気持ちが大切。「寄付」というのは、その感謝の気持ちの表れなんですね」

――なぜ、宗次さんは、そんなにも自分に厳しく、律することができるのでしょうか?
宗次「別に厳しくしているわけじゃないですよ。『そうじ』も『寄付』も『早起きすること』も、楽しいからやっているだけです」

やろうと思えば、誰でもできる
――できない人たちに、アドバスをいただけませんか?なかなか世の中には、1歩が踏み出せない人、気の弱い人、ものごとが続かない人がいるのです。
宗次「まず、何事も目標に向かって、一歩一歩の積み重ねが大切です。音楽家やスポーツ選手が毎日、練習するのと同じで、『そうじ』も『寄付』も『早起き』も、やろうと思えば、誰でもできます。誰でもできるのに、やらないだけ。例えば、私が『一緒にそうじをしよう!』と言っても、ほとんどの人が来ません。講演会で、『朝7時からやってるので、いつでもお越しください』と言うと、ごく稀に来る人がいます。でも、1回か2回で姿が見えなくなります。だからもう最近では、『一緒にやろう!』とは言いません」

――宗次ホールのスタッフの方たちも一緒に「そうじ」されているのですか?
宗次「毎日ではありませんが、週一とか月一とかで参加する人がいます。そうそう、365日皆勤賞で毎朝一緒にやっている人がいるんです。一人で『そうじ』しても淋しくはありませんが、やっぱり仲間と一緒だとやる気も楽しさも倍増しますね」

物事のはじまりは、すべて小さい
――どんなことでも、効果がでるには時間がかかりますね。
宗次「『そうじ』『早起き』は、すぐに効果はでません。年数がかかるのです。続けることで、『ああ、やっていて良かった』『あの時、辛かったけど続けていて良かった』とわかるのです。ただ単に、楽しいだけの毎日を送っている人は成長しません。どんな小さなことでも、自分に課題を課して生きるべきでしょう。「物事のはじまりは、すべて小さい」のです。理屈じゃなく、まずは始めることです!ココイチの本社の周りに置いていた花のプランターだって、最初は20個でした。それがいつの間にか1.500個になって、みんなに喜んでもらえるようになりましたからね」

――経営者の方に代わって質問させて下さい。『そうじ』や『寄付』をすることは、経営にも繋がってくるのでしょうか?
宗次「『経営』というのは、『自分の会社だけが良ければいい』という考え方ではやっていけません。もっとも、食品偽装などは論外ですが・・・。お客様だけでなく、日頃からお世話になっているお取引先や地域の方たちのために尽くすこと。社会に対する『感謝の気持ち』が経営には必須条件なのです。それが、『そうじ』や『寄付』で養われるのです。それも、長く続けるうちに知らぬ間に」

困った人を放っておけない
――NPО「イエロー・エイジェル」について教えてください。
宗次「『イエロー・エイジェル』って、どういう由来で名付けたか知ってますか?」

――え?ココイチのコーポレートカラーの黄色(イエロー)と、ベンチャー企業などに資金援助する投資家(エンジェル)の意味じゃないんですか?
宗次「いえいえ、実は、『いろいろ援助しよう』・・・「いえろうえんじぇる」という駄洒落から来ているんです」

――(ここで、笑っていいのかわからない。どこまで本気なのやら)
宗次「おかげさまで、ココイチが上場したので、持ち株を売却したお金を元に立ち上げました。夢と目標を持って一つの事に打ち込んでいるいろいろな方々への支援をしています。特に芸術家やスポーツ選手及び福祉施設への助成や支援、早起き、掃除の実践運動、福祉慈善活動の啓蒙等々と多岐にわたります」

――具体的には、どういう人や団体がありますか?
宗次「本当に、いろいろです。例えば、小・中学校、高校等へ楽器を寄贈しています。吹奏楽部で活動をしようとしても、楽器って高価なんですね。だから学校の予算ではなかなか買えないのです。バレエ団が文化交流で海外公演を行う際に支援したり、スポーツだと少年野球の「イチロー杯」やジュニアゴルフ選手権に寄付をしています。夢を抱いている子どもたちが、お金がないためにその夢がかなわないというのは気の毒です。その夢の実現に向けて応援しています」

――大学生に奨学金の援助も。
宗次「はい、田舎から都会の大学に出てきたけれど、実家の経済的理由や多額の費用が必要となる学科の学生に対して応援しています。アルバイトばかりしていては、肝心の勉強ができませんからね。海外からの留学生もいます。現在、35名くらいの人たちに奨学金を送っています。とにかく、困っている一生懸命な人は誰でも放っておけないんです。

『そうじ』や『寄付』はお金があるからするのではない
――最後に、これまた聞きにくいことを伺います。「陰徳」という言葉がありますが、『そうじ』や『寄付』という社会貢献をしていることを、宗次さんは人前でしゃべられますよね。
宗次「はい、私も本当は黙っていたいんです。例えば、ココイチを創業した当時から、地元の社会福祉協議会に寄付をしてきました。匿名で、こっそりと。まだ借金をして、赤字決算だった頃からです。ずっと内緒にして来ましたが、今は社長も辞したので公開しています。それは、私一人の力では小さいからです。もっともっと世の中に『そうじ』や『寄付』を広めて、社会を良くしていきたい。周りを巻き込みたい。一緒になって社会を変えたいのです。

――それで、本意ではないけれど『そうじ』や『寄付』について講演会などで喋っているのですね。
宗次「はい、私の夢は、今の『寄付』文化が10倍になって、困っている人たちが幸せに暮らせる世の中になることなんです。もっともっと、みんなに真似してもらいたいです」

――けっして、資産の有無や多少ではなく、できる範囲でいいんです。10円でも100円でもいいんですよ。
宗次「その通りです。まずは始めることです。一歩を踏み出すことです。それは、きっと、他のこと・・・仕事や人生にも大きく影響することでしょう」

――何だか元気をいただいた気がします。「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動もスタートして10年になりますが、何度もくじけそうになりつつここまで来ました。宗次さんのスピリッツを見習って頑張ります。今日は、ありがとうございました。

(インタビューを終えて)
長いお付き合いにもかかわらず、存じ上げないことがたくさんありました。答えにくいと思われる質問にも真摯に答えていただきました。繰り返しにもなりますが、最後に「そうじ」と「寄付」についての「宗次語録」からいくつか列記させていただき、みなさんにお役に立てたらと願うものです。

一、 まずは助けを求めている人に、気づける人でありたい。
二、 「寄付」は、金額の多寡よりも行為そのものに価値がある。
三、 贅沢をするなら、「寄付」もしよう。
四、 弱い立場の人にこそ、やさしくありたい
五、 多くの人の苦しみを分かち合おう
六、 「寄付」をする人の人生が上手くいかないはずがない
七、 「寄付」は余裕がなくてもするもの
八、 辛い「そうじ」には喜びが待っている。
九、 「拾う」と「捨てる」。この差は大きい。
十、 「そうじ」を続ければ、人生が好転する。
十一、 「そうじ」は一人からでも始めよう。
十二、 「そうじ」は打算や損得では続かない。
十三、 「そうじ」はニコ・キビ・ハキでしよう。
十四、 「そうじ」も「寄付」もやろうと思えば誰でもできる。
十五、 物事のはじまりは、すべて小さい
十六、 お金は「儲け方」より「使い方」の方が難しい
十七、 「行動」すると「心」が変る