第30回「僕たちボランテイア隊」
熱血先生 今日も走る!!!
「子は宝です」 第30回
「僕たちボランテイア隊」
中 野 敏 治
今年の冬は私の住んでいる地区でもなんども雪が降りました。一番降った時は、生徒の下校を早めるほどの雪でした。
翌日には雪はやんだものの、道路以外には雪は積もったままでした。雪が退けられた歩道を生徒たちは登下校していました。
雪が降った二日後です。学校に一本の電話がかかってきました。地域の高齢者からです。受話器を取った職員の顔がどんどん笑顔になっていくのがわかりました。
受話器をおいた職員は、とても嬉しそうに話し出しました。「今の電話だけど、地域に住んでいるおばあちゃんからでしたよ。昨日の夕方、おばあちゃんが長い棒などを使って車庫に積もった雪をおろそうとしていたらしいです。」と話し始めました。
おばあちゃんは雪下ろしをしようとしたのですが、棒が届かなくて、なかなか雪下ろしができなかったのです。その時、男子生徒4人が通りかかって、おばあちゃんに声をかけたのです。
「何か手伝えることがありますか」と。おばあちゃんは、その4人の男子生徒に状況を話して、雪下ろしを頼んだのです。
男子生徒は通学バックを歩道に置き、おばあちゃんが持っていた棒を借りて、屋根の雪を下ろしたのです。
おばあちゃんは、電話で「生徒に名前を聞いても、言わなかったから、生徒の名前はわからないけれど、嬉しくて、嬉しくて、学校に電話をしました」と。
おばあちゃんが雪下ろしをしてくれた生徒4人に名前を聞いた時、生徒は名乗らず、ただニコニコしながら「僕たち、ボランティア隊ですからいつでも声をかけてください」と言ったといいます。
職員の朝の打ち合わせで、この話をしました。全てのクラスで朝の会の時にこの話をしてもらいました。
あるクラスの男子生徒が「俺たちのことだ」と言ってきたそうです。生徒たちは楽しみながら手伝ったと言います。名前を聞かれて「『名を名乗るほどのものではありません』とこいつが言ったんだ」「『ボランティア隊』っていったのはこいつだよ」などと楽しそうに話してくれたと担任から聞きました。
この出来事は全校朝会でも話しました。その四人の男子生徒の笑顔がわかりました。この出来事は学校だよりにも載せました。学校だよりは地域に回覧されます。この記事を読んだ雪下ろしを生徒に頼んだおばあちゃんが「学校だよりが欲しい」と訪ねてきました。
4人の男子生徒がボランティア隊といいながら、おばあちゃん雪下ろしを手伝った行為は、多くの人に伝わり、学校だけでなく、地域にも広がっていきました。
純粋に楽しみながらも手伝った男子生徒の姿を想像します。(子は宝です)