第26回「子供達の心は純粋です」

熱血先生 今日も走る!!!
「子は宝です」 第26回

中野敏治
「子供達の心は純粋です」

① 【男子高校生の見えない優しさ】

ある日の日曜日の夕方、知人の家に行こうと、私の街を走っている路線バスに乗り、最寄駅に向かいました。夕方ということもあり、バスの座席は空いていませんでした。つり革を握って立っている乗客も数人いました。
「高校前」という途中のバス停で数人が降りました。乗車口近くの一人用に座っていたサラリーマン風の男性もその席から降りました。乗ってきた男子高校生がその席に座りました。部活動を終えて、帰るところのようです。少し疲れた様子の男子高校生でした。
それから、幾つかのバス停を過ぎ、大型スーパーのバス停に近づいた時です。ずっと外を見ていた先ほどの男子高校生が、まだ、バスが停まっていないのに、座っていた席を空け、その席の前につり革を握って立ったのです。
不思議だと思いながら彼を見ていました。バスが停まり、乗客が降りた後、最初に乗ってきたのはおばあちゃんでした。
おばあちゃんは、手すりにつかまりながらバスに乗ると、目の前に空いている席を見つけ、嬉しそうにその席にゆっくりと座りました。
男子高校生は、そのおばあちゃんの姿を見て、嬉しそうでした。男子高校生は、バス停にバスが近づいた時、バスの窓からそのバス停におばあちゃんがいることを知ったのです。
おばあちゃんがバスに乗ってからでも席を譲れたのに、その男子高校生は、おばあちゃんが譲られた席ではなく、偶然席が空いていたと思って座ってもらいたかったのかもしれません。
人は席を譲られると、その優しさに感謝します。でも、席を譲ってくれ方かに少しでも気を使うものです。男子高校生はどこまで考えていたのかわかりませんが、少なくともおばあちゃんは誰にも気を使わずに、空いている席に座れたのです。
このバスに乗っていた方々は、この男子高校生の行動に気がついていました。一人の男子高校生の行動が車内を温かにしました。
さりげない一人の男子生徒の行動が、見知らぬ乗客の心を温かくしたのです。

② 【朝会の話を心に】

校長室の前に机を置き、その机の上に水カンリンバという手作りの楽器を置いてあります。
朝会で水カンリンバという楽器を紹介しました。空き缶4つをつなげ、真ん中の2つの缶には少量の水が入っています。その水が2つの缶を行き交う時にでる音が両サイドの缶により、反響するのです。それぞれの缶がそれぞれの役割を持っているのです。その役割を十分に発揮して、素晴らしい音色を出すのです。一つ一つの良さが、良い音色を作るのです。人間も同じ、一人一人の良さがあり、素晴らしい音色を生み出すのです。という内容の話を朝会でしたのです。
その後、校長室の前に水カンリンバを置き、生徒が自由に音色が聞けるようにしたのです。
水カンリンバを聞いている生徒の声は校長室にいる私にも聞こえてきます。ある日、女子生徒2人の会話が聞こえてきました。
「音を聞いてみようよ」「うん」「いい音だね」「私にも聞かせて」少しの間があり「この楽器いくらするのかな、高いのかな」「多分ね」「落とさないようにそっと置こうね」。そしてこんなことも話していたのです。「校長先生が朝会で話していたように、みんながあるからいい音が出るんだね。うちのクラスはどうかな」「うちのクラスだって、みんなでいい音になるよ」と。
二人は自分たちの会話が私に聞こえているとは知らず、話をしていたのです。この二人の会話を聞いていて目頭が熱くなりました。
生徒は朝会で紹介された水カンリンバから、仲間の大切さを学び、それを会話の中で確認していたのです。

子供達の心は純粋です。さりげない優しさ、心にとめていいたことを、素直に思い出せる心。みんな、みんな、心優しい子供達です。

(子は宝です)