二十四万円のメガネ

二十四万円のメガネ

オカネを使いすぎた母親の通帳を取り上げて3か月が過ぎた頃です。息子は私の同級生が社長をするメガネ店に就職が決まりまぁまぁ平穏無事な日々が続いておりました。

ある日家に帰ると新品の小さなしょう油の瓶がありました。

「これどうしたの?」
と母親に尋ねると
「メガネ壊れたで買ったら景品でくれた」

そのまま息子の就職するメガネ店に走りました。息を切らしてたどり着くと店長がニコニコして話しかけてきました。

「『メガネがこわれた』と持ってこられたので、直せますよと申し上げましたが『まー、孫も就職することだでワシメガネ一つおごるわ(買うわ)』とおしゃったんです」

はぁ~、オカネ持っていないはずだけど・・・。孫が就職するからツケで買ったのか?

「『いまワシが持っている1000円を手つけに置いていくで2月末に半金、年金が入る4月に残り半金払うでそれでええか?』とおっしゃいました。もう、岡田くんのおばあ様ですから安心してそれで了解いたしました」

・・・おいくらのメガネを買ったんでしょうか?

「フレームに宝石が入ってレンズも最高級のものにしましたから二十四万円になります」

に・に・にじゅうよんまんえん-----!!!
「はい、いいメガネ買って頂きました」

そりゃあ店長はニコニコでしょう。しかしボクは・・・。後ほどお支払いしますと店長に伝えてトボトボと家に帰ると社長から電話がかかってきました。

認知症の親が値段の高いメガネを注文して後から子供たちがキャンセルに来ることはよくあることだと。なので同じようにキャンセルでもかまわんぞ、と。

いやいや、売り上げが上がると思っていた店長に申し訳ないからキャンセルはしたくない。ただ、もう少し安いタイプに変えてもらえないか?とお願いしました。

後ほど社長から電話がかかってきました。フレームは同じタイプで宝石の入っていないモノに変えてレンズも3段階下げた。これで十一万円になったけどどうだ?と。

ありがとうございます。了解しました。その金額すぐにお支払いに伺います、とお伝えし電話を切り銀行に車を走らせました。

それにしてもアタマいいなぁ・・・って感心している場合じゃないけど。