売れない問題 解決の公式

「売れない問題 解決の公式」

売り上げがジリジリ下がる
新しいお客様が取れない
今までの広告が効かなくなってきた

コロナ禍やウクライナ情勢によるサプライチェーンの分断、歴史的な円安など、私たちを取り巻く環境が、今までにないくらいに大きく変わりました。

それにともなって、営業や、販売、マーケティングといった「売る」ということも変わりました。

この本は、「売れない!どうする?」をテーマに、
事例と理論をひも付けながら書いています。

経営や商売について回る、”売れない問題”を、
どうやって解決すればいいのか?
解決に王道や公式はあるのか?

皆様の商売やビジネスの一助にしていただければ、とても嬉しく思います。
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プロローグ 「売れない問題」に悩む私たち

ある街に、ヘアサロンを経営する山田さんと田中さんという美容師さんがいました。
二人は、ロンドンで修行をしていたときからの仲で、山田さんが先輩、田中さんが後輩という関係です。
その街の住宅地にある山田さんのサロンは、3カ月先まで予約がいっぱいで、新規のお客さまも今はお断りしています。
駅前にある田中さんのサロンは、人通りも多く、立地も抜群なのに、なかなかお客さんが訪れず、利益が残りません。 二人の技術はそれほど変りません。この違いは一体、何が原因なのでしょうか。

新型コロナ感染症の影響は当初想定以上に長引き、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やAI(人工知能)も浸透してきました。
最近では、世界的な資源高や日本の低金利=円安などが原因となって、久々の物価上昇(インフレ)が起きています。
私たちを取り巻くビジネス環境は、かつてないほど激変しています。そのためか、私のもとには、多くの方々から深刻な悩み相談をいただきます。

「実はうちの会社、事業が苦しいのです。どうすれば問題解決ができるでしょうか」

そこで私が「どのような問題が起こっているのですか?」とお尋ねすると、具体的には次のような答えが返ってきます内容が聞こえてきます。

・売上がじりじりと下がっている
・新しいお客さまが獲得できない
・今までのお客さま従来の顧客が、離れていってしまう

多くの方は、これらすべてを「売れない問題」として認識しています。
この「売れない問題」に悩まされているのは、一定以上の規模の会社における経営企画や広告、マーケティングの担当者だけではありません。中堅・中小企業や個人事業主の方々も同じ悩みを口にします。

この苦しい状況から脱するために、流行しているマーケティングオートメーション(MA)の導入に着手して、一人ひとりの顧客に即した売り込み方をするのだ、という会社もあります。
一方で、「SNSの立ち上げだ!」「コンテンツマーケティングだ!」と新しい打ち手を実施する方もいます。
あるいは新規顧客の獲得数を増やすため、営業訪問先数の目標値(KPI)を定める、商品の魅力を高めようと、内容、サービス、価格などで付加価値を考えるなど、さまざまな面からの努力を続けています。
それでもなかなかうまくくいかない……そう感じている方も多いはずです。

◎それ、本当に「売れない問題」ですか?

ここでもう少し、「売れない問題」について考えてみましょう。
先ほどの悩み、「売上が下がっている」「新規顧客が獲得できない」「今までの広告が効かない」は、問題というより、単なる現在の「状況」に過ぎません。

この状況が苦しいのは理解できるのですが、その状況をきちんと整理・解析せずに、「MAの導入だ」「SNSだ」「営業訪問のKPIの導入だ」と、打ち手や対策を実施するために、なかなか成果につながらず、実効性が上がりません。

「状況」というのは、今起きているその場でのある種の現象=症状です。

もちろん、その症状そのものも困りものなのですが、何かしらの症状に悩まされるたびに、それに対処していては、「ビジネスが苦しい」を根本的に解決するのは難しくなってしまいます。
イメージとしては、身体のどこかに痛みがある場合、痛み止めの薬を飲んでも、その痛みは取れるかもしれませんが、対症療法だけでは再発する可能性もあります。そもそも痛みを発生させている原因に対処する根本治療をしなければ、本当の意味での治療にはならない、と理解すればよいと思います。

まずは、自分たち、自社はどのようなゴール(理想)を求めているのかを固めておく必要があります。具体的には次のようなものです。

・毎週、毎月、売上目標が達成できる
・毎日、お客さま候補からメールで問い合わせが数多く寄せられる
・お客さまの満足(顧客ロイヤルティ)を得て、安定的な売上を実現する

こんな抽象的で単純なものでいいのか?と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、商売の本質は、いつの時代も驚くほどシンプルです。

そして「問題」については、現状(状況)とゴール(理想)の構造的なギャップと理解します。
「このままの方向性でビジネスを続けても、理想の姿にはならない」
というものです。
つまり、営業努力が足りない、広告が少ない、など主に経営資源の投入量が原因となっている苦境ではありません。

多くの会社、多くのマネジャーがゴールと現状のギャップを生む構造を解析しないまま、「努力が足りない!」と努力の投入量ばかり重視したり、「時代が変わった!」と目新しい(ように見える)対策ばかりに注力するので、よけいに事態を複雑にしています。

本書では、「売れない問題」について詳しく考えていきます。
ここでもう少し、売れない問題を深堀してみましょう。先程書いた、

・売上が下がってきている
・新しい顧客や販路ができない
・今までの広告が効かない

これは単なる今の状況に過ぎません。もう少し深堀してみると、真の問題はもっと深いところに見つかります。

・売上が下がってきているのは、市場のつかみが浅いから
・新しい顧客や販路ができないのは、顧客のニーズがつかめていないから
・今までの広告が効かないのも、その広告をお客さまが見ていないから

ということがよくあります。これらの主語はすべて「お客さま」です。
つまり問題の本質を認識するには、「あなたやあなたの会社が売れない」のではなく、「顧客が買わない」という事象にフォーカスするのが正解です。

本書が、あなたの「売れない問題」を解決するヒントの一端になることができれば、とても嬉しく思います。

以上 「売れない問題 解決の公式」(日経BP社)より抜粋