お天気のトリビア⑤「延びたり縮んだり」

お天気のトリビア
気象予報士 寺尾直樹

⑤ 延びたり縮んだり

ニュース番組の中でも、実は視聴率の高いコーナーのひとつが「気象情報」だ。だからもう少し厚遇してくれても・・・。でも実際のところ、これを担当する気象予報士は毎日のように右往左往させられている。
番組の途中で突然ニュースが入る。「○○線で人身事故のため、○○と○○の区間で運転が見合わせに・・・」と。すると、すぐさまスタジオのフロアディレクター(FD)から気象予報士に指示が入る。「30秒短くしてください」と。例えば、3分と決められた「尺」でどういった順番でどの画面を使用するか、ひとつの物語として視聴者の皆さんにわかって頂けるよう半日かけて考えている。それが一瞬で崩さるのだ。それならまだいい。気象予報の直前のニュースで、キャスターや記者の会話が盛り上がったりすることがある。またFDから指示が飛ぶ。「1分半にして下さい」。
さあ、どうしよう!当然、早口になる。何が何でも時間内に収めてやる!!プロの意地だ。その時、なぜかしら普段よりも流暢にしゃべる自分に気付く。・・・が、後でVTRを見ると惨憺たる出来で真っ青になることも。
反対に「1分延ばせ」という場合。これが案外たいへんなのだ。ゆっくり話すのにも限界がある。そこでネタの「引き出し」を用意しておく。「今日の雲の形」「セミ初鳴き」など、その数が多いほど突然の「延長」に慌てなくて済む。しかし、調子に乗って喋り過ぎてしまい、尻切れトンボに・・・。どの局の気象予報士も「時間調整役」という悲哀を背負って戦っている。

「ココロがパーッと晴れる「いい話」
気象予報士のテラさんと、ぶち猫のテル」(ごま書房新社)より