「やまとしぐさ」講座・「日本の予祝言葉『おめでとう』」

辻中公の「やまとしぐさ」講座・

日本の予祝言葉「おめでとう」

よしゅく「おめでとう」は、日本の予祝言葉です。
予祝とは、家族は安泰で健康で生きることを、予めお祝いすることです。
このように日本では、縁起を担ぐ文化があります。
それは使う言葉に魂が宿る「言霊」といって、言葉の通りの人生が現実化されると信じられているからです。

予祝言葉の中で、新年が明けて一カ月ほど挨拶に使う言葉があります。それが「おめでとう」です。
「おめでとう」という言葉は、試合に勝ったとき、コンクールに入賞したとき、昇進、誕生日、結婚など結果が出たときに使いますが、それをお正月には全国民がそこかしこで言い合います。

十二月三十一日まで、「おはようございます」「こんにち は」「こんばんは」と挨拶をするのに、一月になった途端、「おめでとうございます」 と言うのです。
皆さんも年が明けた途端、普段の挨拶代わりに「おめでとうございます」と言うのではないでしょうか。
家族にも、近所の方にも、テレビ、ラジオでも、どこでも「おめでとうございます」と言います。

日本語は一音ずつに意味があります。
「おめでとう」の意味を紐解くと、 お ... 接頭語、丁寧に表現する言葉め ... 芽で ... 出るとう ... 数字の十、完成のこと。
つまり「もう、あなたは芽が出て完成しましたね」という言霊です。新年を迎え た途端、みんなで完成を喜び合っているのです。
「もう、芽が出た!」「よかった! よかった!」「完成した!」「成長した!」と年の始まりに、全国民がこの一年間間違いなく皆の芽が出ることを予め祝う「予祝」の言葉を言い合うのです。

しかし最近は、言葉を短縮している人がいます。
「明けましておめでとうございます」のことを、「あけおめ」と言うのです。

言葉には魂が宿るので、短縮した「あけおめ」では本来の完成を予祝する言葉になりません。
一年後の人生は変わってしまうかもしれません。それほど、言葉は大切です。祝杯をあげるとき「乾杯」と言いますが、この言葉は完敗という音と同じになりいやさかますから、本来は使わない方がよいです。
盃を交わすときには「弥栄」と言ってみてください。
ますます栄える、という意味です。