辻中公さんプロフィール

日本人が大切にして来た
「やまとしぐさ」を伝える

辻中 公(つじなか くみ)

一般社団法人やまとの智恵実践協会代表
やまとしぐさ伝承学師範

京都の神道の家系に生まれ、日本の古文書を60年以上研究してきた父木村忠義と、茶道・華道・書道の師範である母に育てられ、常に「やまとの智恵」を身近に感じながら育つ。

人生や仕事が輝き出す、人としての基盤・土台になる一心五心(お陰様、感謝、思いやり、尊敬、責任、信頼)を育むこと、身も心も美しくする日本の古き良き智恵を『やまとしぐさ』の名称で確立。自身の主宰する『やまとしぐさお稽古』をはじめ、一般向け講演会、幼稚園から専門学校までの幅広い教育機関、企業研修など様々な活動を通して実践形式で啓蒙している。

平成27年 東久邇宮文化褒賞受賞
平成28年 東久邇宮記念賞受賞
平成29年 国際アカデミー賞受賞
令和3年 東久邇宮平和賞受賞
令和3年 二代目木村忠義襲名
令和3年 先代旧事本紀大成経やまとの智恵伝承

海外講演
アメリカ、オーストラリア、台湾

「やまとしぐさ」には、本来だれもが持っているその人ならではの個性と美しさを引き出して、生きることの幸せを知って、社会に貢献していただきたいという願いが込められています。
言葉や食事の作法、四季の節句、日本独特の所作の意味を通じて、生き方、才能、自分発見、人生の解決方法を会得していきます。

日本人が「正直で誠実」と言われているのは、いにしえからの「片手を添える」「お辞儀をする」といった所作法と密接な関係があるからです。
風呂敷、袱紗(ふくさ)、扇子、お懐紙、手ぬぐいなどの日本古来の道具のルーツや、現代の日常での所作一つひとつを学び、身につけることで、心の内面を磨き、内なる奥行きを知り、平穏な心、慈悲の心、分かち合いの心を自ら発見することになります。 どこに行っても、どんな場所であっても冷静沈着の穏やかな自分が在ることに気づきます。それは国境を越えた海外であろうとその本質は変わりません。

「やまとしぐさ」の元である「やまとの智恵」は古事記より百年前に編纂された古文書を基本とし、天皇家と六家(吾道・卜部・忌部・物部・出雲・三輪)にのみ伝わっていたものです。
その古文書には、本来一人ひとりが持ち得ていた才能を見出し、発揮させる方法が記されています。
本質を見る目を培い、丁寧で、品のある生き方。
勇気と愛が溢れ、本物の「感謝・思いやり・尊敬・責任・信頼」の五つの心が備われば、本来の自分が輝きだします。 やまとしぐさに内包されている深い意味合いを知ることで、多くの方々の安らぎと目覚めのきっかけの一里塚になれたら幸いです。

志賀内泰弘

形を学べば、心が養われる・・・辻中 公さんのこと

 若い日、まだサラリーマンをしていた頃、茶道を習ったことがあります。
その頃の私は、日々、仕事のノルマに追われる毎日で、とにかく成績を上げることが第一の使命でした。
 「能率・効率」を重視して、無駄な物ははぶき、数字を追い求めて成果を上げました。そのモードのまま、教室に通ったです。
 茶室で、他の生徒さんもいる中で、私は先生を質問攻めにしました。
 「なぜ、茶室に入る時には『にじる』のですか?」
 「なぜ、『湯こぼし(建水)』を持って下がる時、左回りなのですか?」
 「なぜ、・・・?」
 それは、私の仕事をする上でのスタンスでした。疑問が湧いたら、すぐに人に訊く。「頑張る」とか「やる気」というような精神論ではなく、どんなことでも論理的に納得した上でなければ、行動しない習慣が身についていたからでした。
 先生に言われました。
 「そんな質問をされる方は、今まで一人もいらっしゃいませんでしたよ」
と。それは叱るでも、呆れるわけではもなく、ただ微笑んで。
 その後、「いい質問です」と言われて、一つひとつ丁寧に、かつ論理的に説明をして下さったのです。

 さて、年月が流れて、ある人からこう諭されました。
 「茶道というのは、形から入る美学なのです。まず形を学ぶ。理屈は考えない。でも、茶杓一つ手に取ること、袱紗捌きの仕方にも「意味」があるのです。でも、その理由を説明したりはしないのです。長い年月、習い続けるうちに、その形が自然に身に付きます。10年、20年・・・と繰り返すうち、ある日、『あっ!』と気付く瞬間がやって来るのですね。『ああ、あれは、こんな意味があったんだなぁ』と分かるんです」
 私は、茶道の先生を質問攻めにした日のことを思い出し、赤面しました。
 思い返せば、古来、日本に続く、歌舞伎、能・狂言などほとんどの芸能がそうです。それだけではありません。剣道や柔道なども「形」を重要視します。その「形」を身に付けた時、相手に勝る「心」を得ることができるのです。

 さて、遠回りました。
 辻中公さんのことです。
 「やまとしぐさ」という日本古来から伝えられている「所作法」を、現代の人々に教えておられます。それは、「形」から始まります。若い頃の私だったら、おそらく「なんだ、そんな非効率な」と興味を示すこことはなかったでしょう。
 辻中さんとは、どこで知り合ったのか、まったく記憶にありません。
 どこかのパーティなのか、誰かの紹介なのか。
 でも、間違いない事。
 辻中さんの活動に心惹かれて、ずっとずっとお付き合いが続いているのだと思うのです。
 形を学べば、心が養われる。
 答を人に尋ねて「知る」よりも、黙々と「形」を真似て続ける方が、間違いなく自分の心の「糧」になるのだと信じます。