「道を切り拓く」
渡辺経営コンサルタント事務所 季刊誌「かけはし」vol.118号(令和6年1月号)
「守(しゅ)・破(は)・離(り)」という言葉があります。「守」は、しっかりと基本の型を覚えそれを守ること。「破」は、その型を破って新しい型を創造すること。「離」は、その型を超越し、型にとらわれず独自の境地を切り拓いていくことを意味します。
良い師を持つと、師匠が基本を徹底して仕込んでくれるので、その後の上達が早いといわれますが、良い師匠は、自分の切り拓いた型(やり方)を徹底的に伝授するとともに、弟子がそこから抜け出して独り歩きをすることも望むものです。すなわち、「道を切り拓く」弟子になってほしいと願っているのです。
日本は古来から柔道、剣道などの武道も、書道、茶道、華道などの稽古事も、日々の修練を通して本質を追求する「道」を究めたがために、今でも誇るべき日本文化として定着しており、海外からも高い評価を得ているように思います。また、「守・破・離」というプロセスを通して、究めることが日本人の「道」なのではないかと思います。
商いの世界においても、石田梅岩の「石門心学」や老舗企業の家憲や家訓の教えなどは、お客様のお役に立つ商い、お客様の喜びや感動を創造する商いを目指す「商人道」を追求しているように思います。毎年のように繰り返されている企業の不祥事や身の丈を超えた経営破綻は、この「商人道」から逸脱してしまった結果です。何をするにも、基本的な考え方や理念を正しく理解し、それを実践し、さらにその奥義を求めて新しい道を切り拓いてきた今までの日本人の特性を、経営や仕事、そして日常の生活に活かしていくことが大切であると思います。
「温故知新(おんこちしん)」という教えがあります。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」という意味ですが、古来からの日本人の教えや美徳を学びながらそれを実践することに、混迷の時代であってもオンリーワンの存在として生き抜いていく「道」があるように思います。
道を歩く人
歩いたあとが道になる人
河合寛次郎先生