過去の失敗を繰り返す人と活かそうとする人

(支部報告)
愛知県瀬戸市立(小中一貫校)にじの丘小学校長・渡邊康雄さんからの報告

「過去の失敗を繰り返す人と活かそうとする人」

「大変申し訳ありません。うちのミスですので…」
車のディーラーへ点検に行った時のことです。作業が終わるのを待っていると、隣のテーブルから聞こえてきた言葉です。ふっと目をやると、メカニックと店長の2人がマスク越しにも恐縮している様子が伝わってきます。
どうやら点検した後にオイル漏れがあったようです。メカニックが原因を説明し終わったころ、車の持ち主である初老の男性は落ち着いた様子でこう話されました。
「そんなの人間がやることだからミスはあるって。いいよ。そんなに謝らなくても。オイルが漏れないようにしてくれたらそれでいいんだから…。」
そんな温かい言葉に2人はお礼を言うが、あいにく修理するための部品がなく系列店まで片道2時間はかかるらしい。つまり往復で4時間。メカニックはその部品を調達、修理したあと、自宅まで車を届けることを提案するがその方は、
「いいよ。いいよ。わざわざ自宅まで来てくれなくても。でも、さすがに4時間は待てないから代車を貸してくれる? 電話してくれたら取りに来るから」
と、落ち着いた様子で話をされる。
あぁ、これで一件落着かなぁって思った瞬間、店長がこう切り出した。
「ところで、オイルが漏れたガレージの方はどういたしましょう。」
心の中で「えーーー。そこまで対応するの!?」って思いましたが、その提案についても、
「大丈夫、大丈夫。そんな気を使ってもらうようなガレージじゃないから問題ないよ。」
っていう言葉を残し、自宅に戻られました。
その後、店長と話をする時間がありましたので、疑問に思ったことを問いかけてみました。
「すみません。先ほどのやり取りが聞こえてしまいました。それにしてもあのお客さんカッコイイですねぇ。お店の失敗を責めるような感じがまったくなかった。なかなかできないと思うんです。ところで、区切りがついたあとにガレージの話を出されましたよね。ずるいかもしれませんが、あそこで終わるという選択肢もあったかと思うのですが…。」
すると店長は、
「実は、私が若い頃、同じようなことがあり、その時はお客様のご自宅が新築でガレージの工事をやり直したという苦い思い出がありまして…。」
と、話してくれました。過去の失敗から逃げずに対応した店長の気配りと勇気に心から拍手です。
自分の考えを主張をしたり、納得するまで問いただすことが一概に悪いことだとは思いません。ましてや今回は店側に過失があることは明らかです。しかし、この男性は失敗を責めないだけでなく、その失敗すら包み込む優しさで対応された。なんて器が大きく、なんてカッコイイんだろう思いました。
「人間には2種類しか存在しない」という例え話を聞いたことがあります。
「お金を払う人と受け取る人」
「できない理由を考える人とできるように工夫する人」
今回の出来事で新たな2種類が自分の中に加わりました。
「過去の失敗を繰り返す人と活かそうとする人」
「相手の失敗を責める人とその失敗すら包み込む人」
自分は?って振り返ると、うーん、まだまだ修行が足りないようです。

(編集長・志賀内)
ああ、恥ずかしい。私は、過去の失敗を繰り返す人です。そして、ときどき、相手の失敗を責めてしまいます。う~ん、修行が足らんなあ。