3人のお姉ちゃん

愛知県瀬戸市立(小中一貫校)にじの丘小学校長・渡邊康雄さんからの報告
「3人のお姉さん」

本校は昨年の4月に開校したばかりの小中一貫校で、約880人の児童生徒が仲良く生活をしています。

新型コロナウィルスによる休校から学校が再開した6月の出来事です。

児童玄関の前で1年生の女の子がお母さんの手を握り立ち止まっています。学校に行きたい気持ちはあるようですが、少人数の保育園から小学生から体の大きな中学生までたくさんの人が集まる様子に少し戸惑っているようです。自分が声をかけようかなぁとも思いましたが、たまたま近くを通りかかった中学生3人に「いっしょに行こうって声をかけてあげてくれない?」ってお願いをしました。すぐに「分かりました!」と言って3人が「お姉さんたちといっしょに行こう!」って声をかけると何かが吹っ切れたようにお母さんの手を離し、お姉さんたちといっしょに教室へ。「あぁー良かった。本当に助かります。」と安堵のお母さん。
次の日もお母さんといっしょにその子はやって来ました。その時もタイミングよく3人のお姉さんが登場。お姉さんたちが声をかけると昨日と同じように登校することができました。
4人の後ろ姿を見ながら「なんだか微笑ましいですね。」って、お母さんに話すと「本当にありがたいです。でも、通学班で行くとお姉さんたちに会えないから、明日もお母さんが送ってと言うのですが私も仕事があって…。」と少々困り気味。
そこで、3人に「通学班だとあなたたちに会えないから悲しいって話しているんだ‥。」って伝えると「わぁーめちゃくちゃかわいい。じゃあ、私たち〇〇ちゃんが来るまで待っています。」と。
あれからずいぶん月日は経ちましたが、今でも優しいお姉さんたちは児童玄関で〇〇ちゃんを待っています。
(編集長・志賀内)
幼い頃って、ほんの些細なことから学校へ行けなくなってしまうことがあるんですよね。そう思うと、お姉ちゃんたちの行動は、この新一年生の女の子にとって、どれほど大きなことだったか!それこそ、人生を変えてしまうような出来事だったはず。「ああ、3人のお姉ちゃんに会いたいなあ」
【にじの丘小学校の後日談】
実は、約9か月経った3月4日のことです。
8年生のおかげもあり、1年生の子は学校にも慣れ、友だちもできました。そんな様子を察した8年生から「私たちが登校すると〇〇ちゃんは一緒にいる友だちを置いて、私たちと一緒に来てくれる。うれしいけど、なんだか友だちと引き離してしまうような感じになっているので・・・」と申し訳なさそうに話してくれました。
待ち合わせすることも思いやり。そっとしてあげることも思いやり。だから、こう声を掛けました。
「いいと思うよ。いつまでもっていう訳にはいかないしね。いずれにしてもあなたたちのおかげで○○ちゃんは学校に来て、友だちがたくさんできた。ありがとうね。廊下で会ったら手でも振って挙げてよ。」
1つの区切りがついた翌日。タイミング良く1年生のお母さんと8年生が昇降口前でバッタリ。
お母さんは、
「こんなに長い間、待っていてくれたことを知らなかったの。本当にありがとう。朝の待ち合わせは区切りを付けたみたいだけど、お姉ちゃんたちのことが大好きだから、また声をかけてあげてくださいね。」
と話すと、3人は最高の笑顔で、「分かりました!」って答えておりました。
第1ステージが「待ち合わせ」だとすれば、第2ステージは「お姉さんからの卒業」。そして、第3ステージは数年後、今1年生の子が「お姉さんと一緒に行こう。」って小さな子に声をかけるときでしょうか。