『若い友達ができた』 (2008/7/17)
豊田市の村田美智子さんは、この五月に満八十歳になった。三度の大病を経験したが、いつも「負けるものか」と前向きな姿勢で乗り越えて来た。しかし、股(こ)関節の脱臼で人工関節手術を受けているため、長い距離は歩けない。それでも徒歩十分ほどの場所にある交流館(公民館)で、俳句などを学ぶのが生きがいになっている。
一つ困ったことが。日本画の教室が建物の二階なのだ。絵の具や筆、絵皿のほか、大きな画板など荷物が多い。カートが重くて持ち上がらない。そんな時だ。四十代の清掃スタッフの女性が、サッと荷物を手にして運んでくれた。
日ごろからできるだけ人に甘えないように心掛けている。でも、できないこともある。それだけに涙が出るほどうれしかった。以来、毎回、その女性が荷物を運び上げてくれるようになった。
今年の三月も終わりのころ。その女性から一通の手紙を手渡された。そこには、交流館を退職する旨と「ほんの少しの会話だったが楽しかった」と書かれてあった。こんな年寄り相手に「楽しかった」などと…。生きる力をもらった気がした。それを機に便りと電話の付き合いが始まった。ハンバーグやスパゲティが好物ということを覚えていてくれて、食事にも誘われた。
村田さんは言う。「何と私に若いお友達ができたのです。生きているって素晴らしい」