両親になり代わって (2008/11/23)

 碧南市の鷺武子さん(67)には、中学校時代に何をするにも一緒の友人がいた。仲良し三人組だったが、このところ年賀状だけの付き合いになっていた。

 昨年五月のこと、そのうちの一人の友人の娘さんから「母が会いたいので呼んでほしいと言っている」と電話があった。病院へ駆けつけ、十年ぶりに三人そろって再会した。余命三カ月とのことだった。三月にはご主人を亡くされたばかりであることも知り胸が痛んだ。

 それから一カ月後、訃報(ふほう)が届いた。通夜の席では、息子さんが涙を流しながらも立派な挨拶(あいさつ)をされた。聞けば、葬儀の段取りや後々のことなど、すべてお子さんたちに指示してから亡くなったという。昔から何事にもきちんとしていたので、彼女らしいと感心した。

 そして今年の夏、亡くなった友人の息子さんから暑中見舞いのはがきが届いた。「今後ともご指導ご鞭撻(べんたつ)くださいますようお願いいたします」という挨拶文に続き、こんな言葉が添えられていた。「他界した両親になり代わりまして、皆さまのご健勝をお祈りしております」

 葬儀から一年以上もたち、お子さんからこのような便りをもらったことは初めてだった。これも彼女が指示したことだろうか。よく教育されたことだなあとあらためて感心した。お盆には建てられたばかりの墓にお参りしてきたという。