夫婦で営むたこ焼き屋さんで (2008/3/15)
ご夫婦でたこ焼き屋さんを営む小牧市の鈴木節子さん(61)は、店を始めてこの春で十年になる。一月の寒い夕暮れ時のこと。中学一年生くらいの男の子がやって来た。「六個ください」と言う。鈴木さんの店では、六個、八個、十個という単位で販売している。残りの八個が売れたら店じまいしようと思っていたところだった。「最後だからサービスね」と八個を詰めて手渡した。
少年は店先で食べ終えると、プラスチック容器を自分の自転車のかごに入れた。中には道端に捨ててしまう人もいる。「家に持って帰るんだな」と感心した。当たり前のことがなかなかできない時代だ。「私が片付けてあげる」と声を掛けてごみになった容器を受け取った。
すると「おいしかったです。ごちそうさま」と答えてくれた。それだけではない。こちらを向き直すと、両手を合わせて深々と頭を下げたのだった。まるで托鉢(たくはつ)のお坊さんのように。中には「お金を払って買ってやっているんだ」という態度の人もいる。食べ物に感謝する心が伝わり、すがすがしい思いがした。
幼稚園や小学校のころからのお客さんが、わざわざ訪ねて来ることがある。「大学に受かったよ」とか「社会人になったよ」「里帰りしたんだ」と報告してくれる。「少し早いけど所帯を持ったんだ」と赤ちゃんを連れて来た子もいた。
ご多分に漏れず、小麦やタコなどの原材料高騰で苦しいが、そんな声を聞くとなかなか値上げもできない。「無理せず長く仕事をして行きたい」とおっしゃった。