障害者専用駐車場での出来事 (2009/3/8)

 前回、車いすの生活を余儀なくされている三好町の山口主(つかさ)さん(71)の話を紹介した。今日はその続き。

 一人暮らしの山口さんは、雨の日の買い物が一番苦労するという。自動車から車いすに乗り換えるので、屋外駐車場だと濡(ぬ)れてしまう。そのため、屋内駐車場に向かう。

 ところが障害者専用のスペースが、一般車両で埋まっていて利用できないことが多いという。山口さんが車いすに苦労して乗降している目前で、健常者の若いカップルが障害者専用スペースに駐車していくこともあった。

 ある大型スーパーでも、店の入り口前に用意された十台の障害車専用駐車場のほとんどに一般車両が止められていた。このことに頭を悩ませた店主は、そのうち二カ所に赤い三角コーンを置いて注意を促すようにしてくれた。

 ところが、一人で運転して来る山口さんのような車いすの利用者には、これが逆効果になる。車からいったん降りて車いすに乗り換え、コーンを寄せてから再び車に乗り駐車しなくてはならない。

 そもそも、そのいったん乗降するスペースがないのが実情だ。そこで山口さんは、五センチずつ車を移動させ、窓から手を伸ばして少しずつコーンをずらすドライブテクニックを身に付けた。

 ある日のこと。スーパーに併設するクリーニング店の女性店員が飛び出して来た。「いいですよ、やりますから」と言い、コーンを移動させてくれた。おそらく、いつも苦労している光景を見ていたのだろう。その後も、山口さんの姿を見かけるたび、走って来てくれるという。