30年ぶりの再会 (2010/2/28)

 昨年の十一月十三日、扶桑町の松枝みどりさん(49)は同居していた義母を亡くした。法要などで慌ただしく時が過ぎ、十二月二十一日に喪中のはがきを投函(とうかん)した。その翌日のことだ。

 聞き覚えのない男性の声で電話があった。「あなたの家を探している人がいます」という。義父が電話に出たが、尋ねている人がどこの誰だか分からず要領を得ない。とりあえず目印として、家のすぐ近くのスーパーの名前を答えた。

 しばらくして、再びその男の人から電話があった。車でスーパーまで送って来たので迎えに来てほしいとのこと。義父が急いで迎えに行くと、家を探していたのは、義父が名古屋に住んでいたころの幼なじみだった。三つ年上だから、八十四歳になるはずだ。

 以前、一度訪ねて来てくれたことがあり、最寄りの扶桑駅で降りた。ところが反対方向へ歩き始めてしまった。見れば歩くのもおぼつかない様子。その足で道に迷ってしまい、通りすがりの人に喪中はがきを見せて尋ねたところ、親切に電話をしてくれた上に送り届けてくれたのだという。

 相手は義父が住んでいた借家の大家さんの息子で、お互いの家を行き来して兄弟同然の間柄だったという。その“弟”から「妻を亡くした」との知らせを受け、居ても立ってもいられなくなってしまった。とにかく取るものも取らず昔の記憶を頼りに電車に飛び乗ったらしい。「きっと悲しみに暮れているに違いない」と自分のことのように思って。

 松枝さんから車で送ってくれた男性へ。「おかげで三十年以上ぶりに義父が幼なじみと再会できました。ありがとうございます」