あなたを見て幸せになりました (2011/6/12)

 新城市の溝口実穂さん(42)は毎朝、ご主人を車で勤め先まで送って行く。ある日のこと。家を出るときにはやんでいた雨が、帰り道で再び降り出した。ワイパーをつける。道行く人たちも傘を差し始めた。

 ふと見ると、おばあさんが台車を押しながら歩いている。今日は可燃ごみの収集日。きっと雨がやんだので「今のうちに」と収集場所まで出掛けたのだろう。ところが、また雨が…。「気の毒に」と思った次の瞬間の出来事だった。通りかかった新城高校の女子生徒が、そのおばあさんに傘を差し掛けた。おばあさんは手を横に振って遠慮するようなしぐさをした。「近くだから大丈夫です」と言っているかのように見えた。

 溝口さんは幼いころから母親に言われてきたことを思い出した。「人に親切をすると自分に返ってくるよ。でも親切をした人からではない。どこかで誰かが見ていてくれて、他の人があなたに親切にしてくれるのよ」。そう信じて人に優しくするように心掛けてきたという。

 溝口さんは、大学と就職で8年間を長野県で過ごした。見知らぬ土地で最初は心細かったが、周りの大勢の人たちに親切にしてもらった。そのおかげで楽しく暮らすことができた。それまでの親切が返ってきたのだと思った。

 「きっと私の他にも彼女の行動を見ていた人がいるでしょう。きっと良い事がありますよ」と溝口さん。「あなたを見て一日中ずっと幸せな気分になりました。あらためて私も人に親切にと思いました。優しさのお裾分けをし合ったら世界は変わるでしょう」とも。