アサガオに励まされて (2011/11/27)

 豊田市の田中久美子さん(60)は、3月にご主人を亡くした。悲しみに明け暮れ、まるで抜け殻のような日々を送っていた。最低限の家事だけをこなし、テレビの前でボーッと過ごす。家の前に並べていたプランターの花も、水やりを忘れて枯れてしまった。そんな様子を心配して、近所に住む友人がアサガオの鉢植えをプレゼントしてくれた。一つの鉢にえんじ色とむらさき色の二種類の花がいくつか咲いていた。

 実は田中さん。昔はアサガオが好きではなかった。朝咲いても、すぐにしぼんでしまう。何だかかわいそうで寂しい気がしたからだ。ところが、今回は違った。翌朝になると、また二つ、三つの新しい花が咲いている。それを見ると元気が出た。「頑張ってね」と自分が励まされているような気分になったのだという。その時、ハッとした。「私には支えてくれる人が大勢いる」と。

 ある日、少し年上の友人から電話がかかってきた。「雨が降っているね。寂しくないかい、大丈夫?」。その人は、ご主人を交通事故で亡くしていた。だから、よけいに人の心がわかるのかもしれない。別の友人は田中さんの還暦祝いにと、わざわざ赤飯を炊いて持って来てくれた。「仏壇の花は枯れていない?」と言い、供花を持って来てくれた友人。旬の野菜や果物を届けてくれる人も。

 「車いすの人やお年寄りに声をかけるなど、小さなことしかできませんが、私も誰かのために役に立てるように生きていこうと思います。お父さん、もう心配しないで。これからは私も強くなるから」と田中さんはおっしゃった。