三十年間励まし続けて (2012/7/22)

 稲沢市の内藤はるえさん(76)から届いた六十三歳の友達M子さんの話。M子さんは三十年もの間、一人暮らしの叔母さんの世話や介護をしてきた。その叔母さんが七十歳のとき、入院したと連絡が入り駆けつけた。以来、仕事帰りに病院へ立ち寄るようになった。

 その後、老人ホームへ入所。九十七歳のとき、肺炎にかかり寝込んでしまう。気弱になり「早くあの世に行きたい」とつぶやくようになった。そこでM子さんは「百歳まで生きると国から賞状がもらえるよ。市からはご褒美も出るよ」と励ました。耳が不自由なので筆談だ。すると「国」という字を見て、天皇陛下から賞状がもらえると勘違いをしたらしく「頑張る」と答えた。以来、食欲も出てきて体調を持ち直した。

 九十九歳のとき、また肺炎になった。M子さんは毎日訪ねては背中をさすってあげた。今度こそだめかと思ったが、再び起きられるようになった。きっかけはゼリーを食べさせるとき「起きて食べたほうがおいしいよ」という一言だった。そして昨年の六月、めでたく百歳を迎え賞状をもらうことができ、たいへん喜んでいた。それからしばらくして亡くなった。

 実は叔母といっても、M子さんのご主人の叔母であり血はつながっていない。それなのになぜ…。聞けば自身が早くに父親を亡くして母子で苦労してきた。そんなとき親戚の人の応援で救われた。その恩返しのつもりなのだという。内藤さんは「自分にはまねできないけれど、こういう素晴らしい人がいることを知ってもらいたくて」とおっしゃった。