第7回言の葉大賞入選作から(その1)

「今、ここに教育現場が在る」

 一般社団法人「言の葉協会」では、全国の小・中学校・高等学校から毎年のテーマに合わせた大切な人への思いや強く感じた気持ちを自分の言葉で綴る作品を募集し、その優秀作品を「言の葉大賞」として顕彰しています。
 第7回言の葉大賞の入選作品から、紹介させていただきます。

「幸せだね」吉井 泉

 一人娘は今年37歳、ダウン症による心臓と知能に障害のハンディを背負い未熟児で生まれました。同時に生死を問われ、長生きは無理と言われた人生が始まりました。弱い身体は何度も入院、本当に切ないものでした。

 二十歳を過ぎた頃からは一日に6時間の酸素吸入となり、不思議な力で生き延びております。音楽好きで明るく優しい素直な心を持ち、親子三人での食事時、叔父や叔母、今は亡き祖父母たちが集まった時などは「幸せだね」と絶妙のタイミングで発し、その言葉に家内と思わず目頭が熱くなり、知的障害ではありますが「感ずる心」は凄いと感激し小さな幸せを味わっておりました。

 そんな中、更なる障害となる脳出血を昨年九月に発症し救急搬送されて、二週間にわたるICUでの治療を受けました。医師からはベットと車イスの生活になると告げられ頭の中が真っ白になりました。

 そして、半年に及ぶ入院リハビリ、先生方の親身な治療と本人の頑張りに加え、今は亡き祖父母のご加護のお陰もあり、左の手足の麻痺で済み、麻痺の負担で24時間の酸素吸入と介助が必要となりましたが歩いてトイレにも行け、食事と洗面は片手で器用に如何にか自分で可能です。

 言葉はこれまでと同じ様に「幸せだね」を忘れておらず、あらためて家内と小さな幸せに浸っております。この娘の命の力と心の言葉は我家にとってはまるで太陽、絆を深め暮らしの支えでもあります。本当に有難く感謝の毎日です。

 その一方で何故、この娘に情け容赦なく障害が襲い来るのか、やり場のない怒りを覚えました。しかし、怒り嘆いてもこれが現実、わが家族の人生、ならば人とは違う幸せを味わおうと家内と話合い、この娘と生かされ生きていることに感謝をして、この先何が起ころうとも心通わせ「幸せだね」と言われ、言えるように楽しく暮らそうと決めました。

 「子を育て子に教えられ親らしく幸せ人生明日も生きらむ」この娘は「宝」です!

「『生きぬく力』とは」台東区立桜橋中学校 松本 萌奈

 「生きぬく力」と言われてどんなことを思い浮かべますか。喜び、感動、達成感など生きぬく力は人それぞれだと思います。私はこの言葉を聞くと、学校の試験を思い出します。

 試験一週間前、よい結果を残すために必死になって勉強をします。そして、試験を受け、自分の答案が戻ってきます。このとき私は達成感という「生きぬく力」を感じます。苦しい思いをしたからこそ、このような力を感じられるのではないかと思います。

 そして、私たち中学三年生には受験という大きな壁があります。そのため、勉強をしなくてはなりません。

 もし、何もせずに努力をしなければどうなるでしょうか。今後、達成感や喜びを感じることはなくなってしまうのではないのでしょうか。

 試験でよい結果を残すことができたとき、次は今以上によい結果を残したいと何度も思ったことを覚えています。この「生きぬく力」は単なる「生きぬく力」ではなく「人を動かす力」にもなっているのではないかと思います。

 生きぬく力は喜び、達成感、感動という気持ちや感情として表れるだけではなく、人を動かす力に変わったりと行動にも「生きぬく力」が大きな役割を果たしています。みなさんも様々な「生きぬく力」を自分自身で見つけ、そして感じてみてください。自分自身の何かが変わるきっかけとなるかもしれません。

他の「言の葉大賞」の受賞作品や、次回「言の葉大賞」の応募要項は、こちらをご覧ください。
http://www.kotonoha-taisho.jp/

入選作品集「「言葉の力」を感じるとき」Ⅰ・Ⅱや「言の葉CONCEPT BOOK」がお求めになれます。
  
【発行】一般社団法人言の葉協会
http://www.kotonoha.or.jp/pub/

作品を転載使用される場合は、こちらまで承諾の申請をお願いします。

https://www.kyoto-kakimoto.jp/kotonoha-k/contact/