第6回言の葉大賞入選作から(その4)

「言葉の力」を感じるときⅡ

 京都に柿本商事株式会社という会社があります。紙専門の商社です。寺町通りで「紙司柿本」という小売店も経営しています。偶然ですが、この店の大ファンで「かばんが重いよ~」と後悔するほど、ハガキや便箋を買い込んだことがあります。

 さて、柿本商事さんではCSRの一環として、言の葉大賞というコンテストを開催しておられます。「心温まる言葉、心にぐっと響く言葉、そのような伝えたい思いを、紙にしたためご応募ください」と全国に呼び掛けられました。

 第6回言の葉大賞の入選作品から、志賀内が特に心に響いた作品を紹介させていただきます。

入選 高校生部門

「勇気」長野県千曲市 長野県屋代南高等学校3年 伴 未月

 私は小学校の時、毎週火曜日の6時間時間目の授業を受けず、「言葉の教室」という所に通っていた。発音の区別がつかない音を区別がつくようにするための場所だ。

 私は「ち」と「き」の区別がうまくできず、「地球」と「気球」を使い分けることができなかった。頭では地球と発したいのに口では気球と発していることや、真ん中の聞き取れない音を発していることも多くあった。

 更には、「ぎゃ・ぎゅ・ぎょ」の音が「にゃ・にゅ・にょ」となることもあった。単音だと発することはできていたが、「餃子」や「牛乳」等の発音になると発せなくなった。それらの言葉を避けるようにして、友達が発した言葉につなげていたことも多々あった。

 うまく言葉を発せられなかったために、いたずらを仕掛けてくる男子がいた。小学校低学年にして、プールの水に顔をつけることができず泳げなかった私を、無理やり頭を押さえつけて水の中にいれ、私は溺れかけた。

 嫌がらせを受け続ける中、一人の女の子が急に私に手紙をくれ、その子とはそこから手紙の交換が始まった。何度かやりとりしたある日の手紙には、私を励ます言葉が書かれていた。

『自分は自分しかいないんだからね‼』

 その言葉は、私に勇気をくれた。私が手紙を落としたことから、交換していたことが周囲に広まって、手紙はそれで終わってしまったが、その子はその後も言葉をくれた。その子にもらった最後の言葉が卒業文集に書かれていた言葉だ。それが、『個性を大切に』だった。

 この子に会えることが再びあるとしたら―。その時には、「ありがとう」と伝えたい。

志賀内泰弘

 切ないです。
 辛いです。
 他にもきっと、辛いことがたくさんあったでしょう。
 でも、友達の手紙に支えられた。
 いいなあ、友達って。素晴らしいなぁ、友達って。
 そんな友達が自分には、いるだろうかと自問します。
 「はい、います」
 そう答えられます。
 でも、自分は、そういう友達になれるだろうか。
 返事に迷います。

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